【ワシントン=渡辺浩生】米軍制服組トップのミリー米統合参謀本部議長は3日、米シンクタンク「アスペン研究所」主催の安全保障フォーラムで、中国による台湾侵攻は近い将来あるのかとの質問に対し「近い将来にあるとは思わない。(近い将来を)定義づけるならば半年、12カ月、24カ月、そんな間隔だ」と述べ、1~2年以内は台湾侵攻はないとの見方を示した。
ただしミリー氏は、中国軍が台湾統一を「歴史的任務」とする習近平指導部に対し、「武力侵攻の選択肢を提示できるよう能力を構築しているのは明らかだ」と強調し、将来的に習指導部が武力統一を選択する可能性を示唆した。
中国の台湾侵攻のシナリオについて米国防総省は3日、議会に示した中国の軍事動向に関する報告書で、中国人民解放軍が軍創設100年の2027年までの近代化目標を達成すれば、台湾有事に「より信頼できる軍事オプションを指導部に示すことが可能となる」と分析している。
一方、バイデン米政権では、中国側が急ぐ侵攻準備を受けて、台湾防衛の意思を戦略的に曖昧にしてきた従来の台湾関与を見直し「戦略的明確さ」に転換する可能性が取り沙汰されている。
ミリー氏は、台湾関係法などに基づく現行の「戦略的曖昧さ」は成功を収めてきたと指摘。見直しにはリスクもあり慎重な検討が必要とし、「しばらくの間は継続する」との見方を示している。
さらに同氏は「中国が国際秩序を自国に都合の良い秩序に変えるよう並外れた力を備えている」と指摘。「今後10~20年間が米国にとり非常に重大な時期になる」と述べ、米中対立の長期化に米国はあらゆる備えを続けるべきだと訴えた。
中国の台湾侵攻の時期をめぐっては今年3月、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が上院公聴会で「6年以内」に起きる可能性を語っている。