小笠原諸島の海底火山で噴出したとみられる軽石の被害が拡大している。大量に漂着した沖縄県などでは青い海が茶色に染まり、動けなくなる船が続出。漁業や観光、一般生活にも影響が出始めた。軽石は今後、西日本や東日本の沿岸に接近する可能性もあり、専門家らが注意を呼び掛けている。
まるでコンクリート
海面に大量の軽石が漂い、潮に押し流されて浜辺を茶色く覆う。防波堤のある港には泥沼のように滞留し、漁船やボートが身動きできなくなっている…。
沖縄の各地の海岸でみられる光景だ。
被害が深刻な国頭(くにがみ)村の辺土名(へんとな)漁港は10月中旬以降、まるでコンクリートを流し込んだように軽石で埋め尽くされた。県が29日から除去作業に乗り出し、11月2日までに大半を取り除いたが、新たな軽石が入らないよう、港の入り口はオイルフェンスなどで封鎖されたままだ。
軽石は数ミリから数センチの大きさで、船舶のエンジントラブルの原因となる。
国頭漁業協同組合の大城力業務課長は「多くの漁船が半月ほど出漁を自粛している。港外にも軽石が漂流しており、再開の見通しは立っていない」と不安をつのらせる。
県によると、1日現在で県内41市町村のうち名護市やうるま市など27市町村で軽石の漂着が確認された。養殖魚が誤飲したり、国内生産量の99%を占めるもずくの養殖に支障が出たりしている。観光面では、マリンスポーツのツアー中止やキャンセルなどが相次いでいるという。
離島の生活にも影響が出ている。南城市の東沖にある久高島では定期船が10月29~30日に全便欠航し、2カ月に1度の巡回診療が中止となった。現在も減便が続いているほか、今後の状況次第で再び欠航する恐れもある。