米バージニア州知事選、真の敗者はバイデン氏

バイデン米大統領(AP=共同)
バイデン米大統領(AP=共同)

米南部の激戦州バージニア州で民主党候補が敗れた知事選で、真の敗者はバイデン大統領だ。1年後に中間選挙を控え、バイデン氏の政策的な行き詰まりと支持低迷は今後も民主党の足かせとなりうる。政治経験のない共和党候補ヤンキン氏の勝利は、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を共和党に示したといえるだろう。(ワシントン 渡辺浩生)

「バージニアはどんどん青色(民主党のイメージカラー)に変わっている」。外遊先の英国で記者団に知事選の情勢を聞かれたバイデン氏は余裕をみせた。確かに同州は昨年11月の大統領選でバイデン氏が10ポイント差をつけてトランプ氏を破った。

だが1年で形勢が逆転したのはバイデン氏自らの支持低迷と、「トランプ色」を薄めたヤンキン氏の選挙戦略が奏功したからだ。トランプ氏本人から支持を得ながら選挙戦では終始、同氏から距離を置いた。

ヤンキン氏は1日夜の住民集会でも前大統領の名前を一切口にせず、教育、税金、治安など「食卓の話題」に集中した。学校教育で「批判的人種理論(CRT)」の導入禁止を訴えると歓声は一気に高まった。

CRTは人種差別や白人至上主義が教育や司法などの社会制度に構造的に組み込まれ、差別や格差を固定化させたとする理論だ。進歩的な教師らが学校教育に浸透を図っているとの批判を保守層が強め、その是非が全米の論争となっている。

教育と人種問題をからめた主張は、トランプ氏に不信感が拭えない無党派層と同時に、トランプ人気が根強い共和党支持層を取り込むためだ。CNNの出口調査によれば、ヤンキン氏は共和党支持者の96%、無党派層の54%、トランプ支持層の95%を獲得。狙いは的中した。来年の中間選挙で共和党がどう戦うか、その処方箋を示した形だ。

民主党候補のマコーリフ氏はヤンキン氏への攻撃で「トランプ批判」を連呼したが効果なく、その敗北はバイデン氏の不人気ぶりをかえって印象付けてしまった。

政権の看板法案が党内の路線対立で難航し直近の支持率は43%に低下。バイデン氏は外遊出発直前の先月末、大型経済対策法案の予算規模を1兆8500億ドルに半減させる妥協策を発表して打開を図ったが、穏健派の重鎮議員から合意を得られなかった。大型インフラ整備法案も、財政拡大に固執する下院の民主党左派の条件闘争に遭い棚上げ状態だ。

気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合でバイデン氏は「米国は世界中の国々を助ける義務がある」と指導的立場をアピールしたが、最初の信任投票の敗戦は今後のかじ取りに暗い影を落とす。米国が再び内向きに転じる兆候を同盟諸国は警戒するだろう。