「うどん県」の香川 実は「獅子舞王国」でもあった

令和元年の「獅子舞王国さぬき」の様子。一般的にイメージする獅子頭とは全く異なる見た目(讃岐獅子舞保存会提供)
令和元年の「獅子舞王国さぬき」の様子。一般的にイメージする獅子頭とは全く異なる見た目(讃岐獅子舞保存会提供)

祭りばやしにあわせて獅子が舞う民俗芸能「獅子舞」-。香川は今でも800もの獅子舞が残っている獅子舞王国だ。お正月に登場するイメージもあるが、香川では秋がシーズン。獅子舞が地域の結びつきのシンボル的存在となり、それぞれ独自の進化を遂げながら伝承されてきたという。11月7日には、県内の獅子舞が集うイベント「獅子舞王国さぬき」が、国の特別名勝、栗林公園(高松市)で開かれる。今年も新型コロナウイルス禍の影響を受け、規模を縮小せざるを得ないが、主催者は「将来的に讃岐の獅子舞が全国的に知られ、盛大なイベントになるよう、今が踏ん張りどころ」と話している。

保存会が作成した獅子舞王国さぬきのイメージ画像。獅子頭だけを見てもバリエーションに富んでいる(讃岐獅子舞保存会提供)
保存会が作成した獅子舞王国さぬきのイメージ画像。獅子頭だけを見てもバリエーションに富んでいる(讃岐獅子舞保存会提供)

以前は地元ですら…

香川県の獅子舞は天下泰平と五穀豊穣(ほうじょう)を願い、9、10月の週末を中心に数多くの神社で奉納されるかたちが多い。同時期に行われるため、他地域の獅子舞を見る機会もなく、地元では「香川は獅子舞が盛ん」ということですら、以前はあまり知られていなかったという。

各地の獅子舞が集い、披露するイベント「獅子舞王国さぬき」は平成21年からスタート。イベント企画会社に勤める京都出身の女性が秋祭りの獅子舞を見学して感銘を受け、イベント化が提案された。

初年度の参加は18組だったが、イベントは次第に発展。平成29年以降は参加は60組を超えていた。昨年からはコロナ禍で、縮小をせまられているが、オンラインなどを通じて、イベントを継続してきた。

今年の「獅子舞王国さぬき」の開催をPRするイメージビジュアル(讃岐獅子舞保存会提供)
今年の「獅子舞王国さぬき」の開催をPRするイメージビジュアル(讃岐獅子舞保存会提供)

邪気を払う

祭りの始めに邪気を払う役目を担うという獅子舞は、インドが起源で中国を通り日本に伝えられたとされる。

獅子舞には大別して、古代に成立した外来の伝統演劇に関係する伎楽(ぎがく)系と、土着の芸能を基に中世末から近世初期にかけ成立した風流(ふりゅう)系の2系統がある。

伎楽系は2人以上で1体を演じる「二人立ち」が主流で主に西日本に分布。風流系は1人1体の「一人立ち」が多く、関東や東北地方などに広がる。

香川の獅子舞は伎楽系、二人立ちに分類される。獅子頭は木製より張り子が多く、獣毛の表現を保った独特な毛獅子(猫獅子)も。獅子の胴布「油単(ゆたん)」には正絹の生地が使われ、武者絵、毛油単、紋を使った油単、毛模様といった種類がある。


県民性が影響?

なぜ香川県に獅子舞が多く残っているのか。

諸説あるが、神社に氏子集団が複数あり奉納は交代で数年に一度だったが、毎年楽しみたいと考えた氏子が独自に獅子頭をそろえ、獅子舞が増えた▽流行を取り入れやすいといわれる県民性の影響でこぞって追随▽「よそに負けない派手なものを」と競うように-というかたちで、発展したのではないかといわれている。

讃岐獅子舞保存会会長の十川(そごう)みつるさん(50)は「小さな県で平地にまちが集まっており、情報が伝わりやすい。それぞれが自分たちが一番だと誇りを持ち、対抗意識から刺激し合ってきたはず。獅子1体で2人、太鼓と鉦(かね)各1人の最低4人でできるので受け継がれやすかったのでは」と推測する。

十川さんによると、香川県では約400年前には獅子舞が既にあったようで、高度経済成長期で地区自治会の活動が活発な最盛期には約1200で、人口減による舞い手不足や高齢化などで現存数としては日本一の推定800という。

過去に行われた「獅子舞王国さぬき」の様子。獅子頭が勢ぞろいすると壮観。胴布の色や絵柄、白耳や黒耳など「他とは違う獅子頭を」と独自の進化を遂げた(讃岐獅子舞保存会提供)
過去に行われた「獅子舞王国さぬき」の様子。獅子頭が勢ぞろいすると壮観。胴布の色や絵柄、白耳や黒耳など「他とは違う獅子頭を」と独自の進化を遂げた(讃岐獅子舞保存会提供)

「四国四大祭り」に

実は、富山県は獅子舞が伝承している数が平成17年に約1170カ所で「日本一多い」と宣言している。

十川さんたちの保存会では互いを尊重し、富山をはじめ、全国の団体と交流しながら、獅子舞文化を継承、発展させていけたら、と考えているという。

十川さん自身も、地元の造田(ぞうた)八幡宮(さぬき市)の中組獅子保存会に所属。小学生のころから獅子舞を舞っていたという。

獅子舞の魅力について、「素人でも主役になれる、輝ける瞬間がある。世代を超えて深い付き合いができる」という。

「四国三大祭りは徳島の阿波踊り、高知のよさこい祭り、愛媛の新居浜太鼓祭りだが、讃岐の獅子舞を加えて四国四大祭りとして認めてもらえるように発展させたい」と夢を語っていた。(和田基宏)