林業の担い手育て プロが高校生に木登り伝授

ロープを利用して木に登る勝間田高校の生徒ら
ロープを利用して木に登る勝間田高校の生徒ら

将来の林業の担い手となる高校生に、近年普及しつつあるロープを使った木登り(ツリークライミング)の技術を学んでもらおうと10月、岡山県立勝間田高校(同県勝央町)の森林コースの1年生を対象とした研修が行われた。講師の指導に従って安全帯(ハーネス)を装着した生徒たちは、慣れないロープの使い方に戸惑いながらも、しっかりとロープをつかんで木に登り、新しい技術の習得に努めていた。

樹護士の小野さんから安全帯の装着方法を教わる高校生
樹護士の小野さんから安全帯の装着方法を教わる高校生

最新木登り技術

同校敷地内にある広葉樹の上から「登りきった」「おーい、早く登って来い」「腕が疲れる」-。頭にヘルメット、腰にはハーネスを装着した勝間田高校の森林コース5人の生徒たちが樹上で声をかけ合う。近年発達した欧米由来のツリークライミングの実技研修の風景だ。

生徒たちは、この研修の講師を務める岡山市南区の林業・造園「参伍捌(さごはち)」代表、小野英亮(つねあき)さん(41)から、ハーネスの正しい装着の仕方や特殊な結び方をしたロープの扱い方について指導を受けて実技研修に挑戦。ときにバランスを崩しながらも、全身を使って木を登り、ロープをかけてある地上約7メートルほどの高さまで登り切った。

体験した富田光祐さん(16)は「普段できない経験で楽しかった。下を見ると少し怖かったが、仕事に役立つ技術なので習得したい」と話した。

小野さんはツリークライミングや樹上で伐採した枝や幹を安全に下ろすことのできる高い技術を備えた「樹木のスペシャリスト」である樹護士(アーボリスト)の有資格者だ。

アーボリストの技術として発達したツリークライミングは、主にアメリカでレクリエーションとしても知られるようになった。日本では平成12年、普及と指導者育成を目的にツリークライミングジャパン(愛知県瀬戸市)が設立。令和3年現在で約170人が体験イベントで指導できるインストラクターなどとして活動しており、令和元年度には全国で計75回の体験会を開催している。

ツリークライミングの実技研修の前には教室での授業も行われた
ツリークライミングの実技研修の前には教室での授業も行われた

特殊伐採で威力

勝間田高校(生徒数260人)は、明治34年に「勝田郡立農林学校」として設立された創立120年の伝統校。森林コースのほか、食品コース、自動車コースなどがあり、特色ある授業を展開している。

同校は今年度からツリークライミング研修を導入。ツリークライミングとは、これまで職人の経験と勘で培われてきた「木登り」に代わって、科学的な研究でロープの使い方や安全確認方法などをまとめた欧米由来の木登りの技術だ。

林業の仕事は、樹木を伐採すると同時に木を育てることにある。ツリークライミングの技術は、林業の仕事の中の「特殊伐採」で威力を発揮する。

特殊伐採とは、木の幹ではなく枝を切ること。想定されるのは大きな枝が道路上や民家を覆う状況だ。高所作業車やクレーンが進入できない山道や住宅内の敷地で、ツリークライミングが役立つ。チェーンソーを持って木に登れば、枝だけを切ることができる。木の下に建物などがある場合は、切り離した枝を安全に下ろすこともできる。

小野さんは「林業は木を切るだけの仕事と思われがちだが、木を守るのも大切な仕事。特殊伐採で一部だけを切れば、大きな幹を残し木を守ることができる」と生徒に伝える。

発信する林業を

林野庁によると、林業従事者は昭和55年、14万6千人いたが平成27年には4万5千人に減少。また、従事者の高齢化率(65歳以上の割合)も同年25%と、全産業の平均(13%)と比較して高い水準にあり、若い担い手が求められている。

研修を終えた生徒たちに小野さんは「林業は危険を伴う仕事だが賃金は高くない。人は見えない仕事にお金をかけてくれない。若いみなさんが林業に取り組むならSNS(会員制交流サイト)などを活用して林業をアピールしていくことも必要」と今後の課題について説明していた。

また「ロープやヘルメット、ハーネスなど道具を大事にすることは命を守るにもいい仕事をするためにも大切。学校の実習でも道具を丁寧に扱うようにしよう」と生徒たちに語りかけていた。(高田祐樹)