大森由紀子のスイーツの世界

甜菜とマーガリン

バターを使ったクロワッサンはこんな形だ(筆者提供)
バターを使ったクロワッサンはこんな形だ(筆者提供)

以前この欄で、三角貿易による砂糖がいかにヨーロッパに富と熱狂をもたらしたかをお伝えしました。

フランスはナポレオン1世が皇帝となると、1806年、イエナの戦いでヨーロッパ征服を果たします。その際、唯一残ったイギリスを屈服させるために発したのが、征服地にイギリスとの通商を禁じた大陸封鎖令です。しかしその結果、砂糖の流通が断たれてしまいます。そこで彼は自国で砂糖が生産できるかを模索、甜菜(てんさい、砂糖大根)による砂糖作りが広まりました。それは主に北フランスで生産されるようになりました。

また、ナポレオン1世のおい、ナポレオン3世は、長い航海に出る艦隊乗組員のためにバターの代用品を作らせています。それがマーガリンです。フランスはバターがおいしいので、マーガリンを使うイメージはあまりありませんが、パンなどにはマーガリンを使って作ったものもあります。特にクロワッサンは、マーガリンで作ったものとバターで作ったものが見た目から分かるように、仕上げの形を違えています。マーガリンを使ったものは生地を巻いた後、三日月状に曲げ、バターのものは、まっすぐなままというのが伝統です。私がパリに住んでいた頃はほとんどのパン屋に2種類が売られていましたが、今はあまり見かけません。ホテルの朝食に、三日月状のクロワッサンが出てくることがありますが、これはマーガリン入りのものが多いです。

おおもり・ゆきこ フランス菓子・料理研究家。「スイーツ甲子園」(主催・産経新聞社、特別協賛・貝印)アドバイザー