瑞宝単光章・染色デザイナー 坂原栄さん(77)「着物を後世へ」

「時代に乗り遅れるわけにいかない」と語る坂原栄さん=東京都豊島区(竹之内秀介撮影)
「時代に乗り遅れるわけにいかない」と語る坂原栄さん=東京都豊島区(竹之内秀介撮影)

28歳で独立して以来、東京都豊島区を拠点に着物制作に取り組んできた。日本人の着物離れが懸念される中での受章について、「残さなければいけない日本文化として評価してもらえたのかな」と笑みを浮かべる。

友禅職人だった父の下で幼少期から修業を積み、東京手描友禅の技術を学んだ。分業制の京友禅とは違い、図案のスケッチから仕上げまでほとんどの工程を一人でこなす。「色々な色をこの手で重ねていくことで不思議な厚みが生まれ、この世に二つとない作品ができあがる」という。

子供の頃から絵を描くのが好きだった。小学1年で描いた汽車の絵は、校内の美術展で銀賞に。「でも、なんで金じゃないんだろう」。幼心に悔しさを覚えていると、後に教師の間でこうささやかれていたことを知った。「どう見ても子供の絵じゃない。親が描いたに違いない」

今夏の東京五輪の開幕前には、発祥地ギリシャをイメージした鮮やかな色合いの振り袖を作り、話題を呼んだ。従来の着物づくりの枠に止まらず、ショールやTシャツ、ティッシュ入れなど作品の幅は広い。

SNS(会員制交流サイト)や電子メールを使いこなし、孫ほどの年齢の芸術家とも交友関係を築く。「若い人から刺激をもらうと新しい発想につながる。時代に乗り遅れるわけにはいかない」

新型コロナウイルス禍で着物の売り上げは下がり、業界の厳しさは増している。一方で、若い世代や外国人が気軽に着物を着こなす風潮が生まれており、希望の芽がついえたわけではない。

「着物を後世に残すためにあらゆる手を尽くす。それが私の役目だと思っています」

(竹之内秀介)