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「ゾンビ議員」はもう要らない 論説委員長・乾正人

衆院選挙の当選確実が出た候補者の名前にバラの花をつける岸田文雄首相(中央)と自民党幹部ら=10月31日午後、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)
衆院選挙の当選確実が出た候補者の名前にバラの花をつける岸田文雄首相(中央)と自民党幹部ら=10月31日午後、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)

選挙のたびに感心するのは、民意の精妙さである。

これまでのべ24回の衆参国政選挙を取材してきたが、今回の衆院選ほど盛り上がりを欠いた選挙はなかった。

街を歩いていても候補者の辻(つじ)立ちどころか選挙カーに出くわすこともなく、居酒屋で選挙談議を小耳にはさむこともなかった。

期日前投票も前回を下回り、投票率は史上最低を記録するのでは、と気をもんでいたが、あに図らんや前回を上回った。

若い世代を中心に駆け込み投票が目立ち、都内では行列のできた投票所もあった。おかげで午後8時の投票締め切りと同時に発表するため夕方で打ち切る場合の多い報道各社の出口調査は大外れ。平均して自民党を約20議席低く見積もり、逆に立憲民主党を過大視してしまった。3桁を割るとは私も想定外で、まったく面目ない。

21年前、ときの森喜朗首相が「無党派層はそのまま寝てしまってくれればいい」と口走って自民党が窮地に陥ったのは昔の話。令和の御世(みよ)で、無党派の多い若い有権者が寝たままだったらまったく違う結果になっていただろう。

大勢が決した後、ニッポン放送で選挙に強い平沢勝栄前復興相から話を聞いたが、「ほかに選択肢がなかったから有権者が与党に入れてくれただけです」と冷静に分析していた。

日米安保体制に反対する市民団体の仲立ちで成立した立憲民主党と共産党との選挙協力の胡散(うさん)臭さを有権者は敏感に感じ取り、真の選択肢にならなかったのである。

選挙戦中に北朝鮮がミサイルをぶっ放し、中国とロシアの軍艦が徒党を組んで日本一周してくれたのも岸田文雄首相の援軍となった。彼らは自民党の支援団体といっても過言ではない。

それにつけても選挙区と比例代表の重複立候補は、もう廃止すべきだ。制度導入時に、小選挙区だけでは多様な民意を反映できないという理由から比例代表が付加された経緯があるが、ならば政党の責任で、選挙区と比例代表の候補者を分けて民意を問うのが筋。

小沢一郎、甘利明、中村喜四郎といった例を挙げるまでもなく、選挙区で落選したのに、比例で復活当選する制度は、有権者を馬鹿(ばか)にしている。京都、奈良1区では立候補した3人すべて当選する珍事も起きた。投票意欲を削(そ)ぐ「ゾンビ議員」はもう要らない。