日本航空が2日に令和4年3月期の最終赤字予想を発表し、既に業績見通しを公表済みのANAホールディングス(HD)とともに、航空大手2社はそろって2年連続の赤字に沈む。ただ、両社とも下半期は新型コロナウイルスのワクチン接種拡大などが旅客需要の回復を後押しするとみる。本業のもうけの損益で日航は4年3月の月次で、ANAHDは4年1~3月期にそれぞれ黒字化を見込み、前提となる需要予測を国内線で今年度末に85~90%程度と設定した。もっとも、現在も旅客の回復ペースは鈍く、感染の「第6波」など先行きの懸念材料は多い。
「需要予測の精度は非常に高まっている」。
ANAHDの片野坂真哉社長は10月29日の記者会見で、コロナ禍前と比べて年度末に国内線が85%(国際線は30%)に届くとした予測の信頼性を問われ、そう強調した。
同様に国内線が92%(国際線23%)に達すると予測した日航の菊山英樹専務も、今月2日の会見で、企業の出張解禁や団体需要の急回復などを挙げ、「確実に黒字の方向に向かっている」と力を込めた。
強気の需要予測の背景にはワクチン接種の進展に加え、国内外で活用可能な接種証明のデジタル化などにより、経済活動の再開が活発化するとの読みがある。収益の大半を占める旅客収入の上昇が業績を押し上げるとの見方だ。
実際、9月末に政府の緊急事態宣言が解除され、旅客需要は回復傾向にあり、国内便の運航率引き上げや臨時増便の動きも出てきた。
ただ、それでもコロナ禍前の需要と比べると、日航が11月で6割半ば、ANAHDも年末年始は5割程度にとどまる。リモート会議の普及などによるビジネス客の利用減などの不確定要素を考えると、予測した水準まで需要が戻るのか懸念が残る。
また、ワクチン接種が進む欧州では一部で感染再拡大の動きがみられ、国内でも第6波が起きないともかぎらない。ANAHDは年度当初に出した国内線80%との年度平均の需要予測を、第5波を理由に45%まで引き下げたばかり。感染状況が悪化すれば再び数値は大きく変わる恐れがある。
両社は構造改革で「マイル事業」など非航空事業に力を入れているが、まだ緒に就いたばかりで「成果」は見通せない。人員抑制や業務のデジタル化も、業績回復の大きなインパクトにはならないとみられる。
航空経営研究所の赤井奉久所長は「まだ十分な手元資金があり、業績予測がさらに引き下がっても資金繰りには困らないだろう。ただ、資金調達などの思惑から楽観的な予測になっているのではないか」と指摘している。