津波予測「長期評価」の信頼性、再び争点に

東京高裁に入る東京電力の武黒一郎元副社長=2日午後(代表撮影)
東京高裁に入る東京電力の武黒一郎元副社長=2日午後(代表撮影)

東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣の控訴審では、1審で退けられた、政府の地震調査研究推進本部が平成14年に公表した津波予測「長期評価」の信頼性が、再び問われることになる。検察官役の指定弁護士は、裁判官による現場検証や長期評価の策定に加わった気象庁元幹部らの証人尋問を通じて長期評価の妥当性を明らかにしたい考えで、東京高裁がこれらを採用するかがカギとなりそうだ。

「津波地震が福島沖を含む日本海溝沿いのどこでも発生しうる」。こう予測した長期評価に基づき、東電子会社は20年、最大15・7メートルの津波試算を示していた。だが1審東京地裁は、長期評価について「地震発生の可能性の具体的な根拠を示さず、専門家や内閣府が疑問を呈していた」と認定。「信頼性に疑いが残る」と結論づけた。

東京高裁に入る東京電力の武藤栄元副社長=2日午後(代表撮影)
東京高裁に入る東京電力の武藤栄元副社長=2日午後(代表撮影)

この日の控訴審初公判で指定弁護士側は、東京地裁で係争中の東電株主代表訴訟で10月29日、裁判官が第1原発の敷地内を視察したように、第1原発内に裁判官が足を運び、現地を見るよう求めた。加えて「長期評価は多種多様な分野の専門家が議論し、3段階の審査を経て策定されている。作成の主体や経緯を重視して信頼性を判断すべきだ」とした上で、「立証に必要不可欠な証人」として策定に携わった気象庁OBの名前を挙げ、「証人尋問を行い、長期評価の具体的な根拠や、成立過程を明らかにしたい」とした。

一方、旧経営陣の弁護側は長期評価について「(公表した)地震調査研究推進本部自身が、『データの質や量は一様ではなく、信頼性には差がある』と言及している」などと指摘。「防潮堤の建設や電源設備などに必要な措置を講じれば、事故は回避できた」とする指定弁護士の主張には「敷地内に大きな配管が埋められており、工事は容易ではなかった」と反論した。