問われる鉄道の安全性 全手荷物検査厳しく

電車に危険物を持ち込み「凶行」に及ぶ事件は後を絶たない。京王線特急の乗客刺傷事件で、殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者(24)は刃物のほか、可燃性の殺虫スプレーや大量のライターオイルまで持ち込んでいた。海外の鉄道では危険物持ち込みによるテロや事件防止に「手荷物検査」も実施しているが、過密ダイヤの日本の都市部の鉄道では、利便性などの観点から全面導入には踏み切れていない。相次ぐ事件に専門家は「社会がリスクをどう評価するかだ」とし、抜本的な対策の必要性を訴える。

国内の鉄道では、可燃物の持ち込みは禁止されている。きっかけとなったのは平成27年、走行中の東海道新幹線車内でガソリンを持ち込んだ男が焼身自殺を図り、女性客が巻き込まれて死亡した事件だ。

事件を受け、JRや私鉄各社は可燃性液体の車内持ち込みを禁止としたが、手荷物検査がないため、事実上「フリーパス状態」になっており、30年には東海道新幹線で男が刃物で3人を殺傷する事件が起きた。

鉄道会社側は、駅員の巡回や車内の状況を捉える防犯カメラを設置するなどの対応を強化。西武鉄道は昨年度、駅や車両内の防犯カメラを129台増設。全1660台体制(今年3月時点)で監視しているという。だが今年8月にも小田急線車内で男が刃物で乗客10人に重軽傷を負わせる事件があるなど、危険物の「フリーパス状態」は解消されていない。

一方、海外に目を向けると、中国やインドでは一部鉄道で手荷物検査を実施。2004年にスペインで列車爆破テロがあった欧州でも警備員が路線に投入され、「ユーロスター」では金属探知機検査や荷物検査を実施している。

日本でも、今夏の東京五輪・パラリンピックの開催を機に、JR東日本が不審者を自動的に検知できる防犯カメラを採用。首都圏の主要駅などで稼働させ、検知した場合は警備員らが声を掛け、手荷物検査などを行った。ただ、五輪・パラ後は手荷物検査は実施していない。

1日の平均乗車人数はJR新宿駅だけでも47万7000人で、羽田空港の利用客(約8万5000人)の5倍以上に達する。関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「在来線での全手荷物検査は非現実的で社会がリスクをどう評価するかが問題だ。避難マニュアルの画一化や、車内の状態を車掌が把握するために防犯カメラを導入するといった対策が必要だ」としている。