維新にとって最大の激戦区となった大阪10区(大阪府高槻市、島本町)では、新人の池下卓(たく)氏(46)が、立民前職で党副代表の辻元清美氏(61)らを破り初当選を果たした。全国区の知名度と固い地盤を持つ辻元氏の存在により「難攻不落」(維新の吉村洋文副代表)とも言われた同選挙区で維新が議席を押さえた。
池下氏は当選を確実にした午後11時50分ごろ、高槻市の事務所に到着。支援者らと拳を突き合わせて喜びを分かち合い、「最初のほうは先行されたが、それでも諦めず最終盤で追い抜けた」と納得の表情だった。10区での議席獲得は、維新が国政初挑戦となった平成24年以来、9年ぶりだ。
辻元氏と前回比例復活した自民前職の大隈和英氏(52)との三つどもえの戦いに。地元で府議を3期務め、祖父と父が自民の高槻市議だった池下氏が狙うのは、緩やかな自民支持層を含む保守票だった。
序盤は辻元氏リードの情勢で、維新内では「辻元氏は名前で票を取れるから強い。どれだけてこ入れしても厳しい」との見方があった。
しかし10月27日、思わぬ事態で潮目が変わった。自民元副総裁の山崎拓氏(84)が辻元氏の応援演説に立ち、「選挙区は辻元清美、比例は自民党」とアピールしたのだ。
自民内部でも動揺が広がる中、維新の松井一郎代表がさっそく反応。国政で対立する自民と立民の異例のタッグを「とにかく野合」と批判した。そして「まともな政党として、まともな選挙をしていく」と維新のスタンスを強調した。
吉村氏も「世にも奇妙な物語」と揶揄(やゆ)し、選挙戦終盤の29日は高槻市内で何度もマイクを握って攻勢をかけた。
こうした経緯もあって、鍵を握る保守票の取り込みに成功。池下陣営は「山崎氏の来訪は追い風。大隈氏が一番の被害者だ」とほくそ笑んだ。
辻元氏は敗戦が確実となった31日夜、テレビの取材に「大阪10区は(立民にとって)最後の砦のようになっていた。(維新陣営からは)ここを陥落させれば全部取れる、というような勢いを感じた」と振り返り、「本当に維新が強かった」としみじみ語った。