自民前職の石原伸晃氏(64)が10期連続で議席を守ってきた〝石原王国〟の東京8区では、公示直前に野党候補として一本化された立民新人の吉田晴美氏(49)が石原氏を破った。石原派の領袖(りょうしゅう)で党幹事長も務めた大物の敗北は、野党共闘の成果を色濃く印象付ける結果となった。
石原氏の杉並区内の選挙事務所にはこの日、20脚ほどのパイプ椅子が用意されていたが、支援者の姿はほとんどなく、陣営関係者も「結果が出るまでは何も話せない」と緊張感を漂わせていた。
投票締め切り直前になってようやく、自民党の参院議員ら応援の議員団15人ほどが椅子に着席。午後8時過ぎ、吉田氏の当選確実の一報が伝えられると、議員らは一様に押し黙ってテレビの速報を見守った。
同8時20分ごろに事務所に姿を見せた石原氏は議員らに対し、「申し訳ございませんでした」と2度にわたって深々とお辞儀。「私の力量不足。支援者、議員団一丸で選挙を戦ったが、大将として申し訳ない」と敗戦の弁を述べた。
れいわ新選組代表の山本太郎元参院議員の出馬表明をめぐる騒動で、一気に全国的な注目を集めた東京8区。公示前には石原氏優勢の見方もあったが、立民・共産・れいわの3党間で吉田氏への候補一本化がまとまり、風向きが変わった。
石原氏は公示日の第一声から「(候補統一は)野合だ」と声高に批判を繰り返したが、選挙戦終盤には自民党内の情勢調査でも吉田氏に逆転されていた。
石原氏の初出馬時から支援を続けているという男性(61)は「野党一本化で基礎票の数で負けており、物理的に厳しい戦いになってしまった」と悔しさをにじませた。