V逸阪神「日本一」への起爆剤 佐藤輝の処方箋

CSでの巻き返しに向け、再開された練習でバットを振る佐藤輝=10月29日、甲子園(中島信生撮影)
CSでの巻き返しに向け、再開された練習でバットを振る佐藤輝=10月29日、甲子園(中島信生撮影)

プロ野球阪神の新人、佐藤輝明内野手(22)のレギュラーシーズンは驚きとともに始まり、ため息で終わった。開幕からレギュラーに定着し、前半戦に放った本塁打はリーグ4位。新人記録の更新だけでなく、タイトル獲得の期待すら抱かせた。だが後半戦は不振に陥り、それと軌を一にするように一時は首位を独走していたチームも2位に終わった。ただ、クライマックスシリーズ(CS)で優勝チームを下し、日本一に挑む道は残されている。そのために不可欠な大型ルーキーの復調はなるだろうか。

オープン戦からの豪打連発にファンの期待は「バースの再来」と高まったが…

前半戦絶好調ながら後半に失速したのは、昭和59年の小早川毅彦も同じだった


「清原超え」期待も

10月26日夜、首位に立つヤクルトが先に勝って優勝へのマジックナンバーを「1」とし、阪神は絶対に負けられなくなった今季最終戦の中日戦。3打数無安打で九回を迎えた佐藤輝に第4打席は回ってこないまま、阪神は0-4で敗れて優勝を逸した。

打率2割3分8厘、64打点、24本塁打。これが佐藤輝の今季の打撃成績だ。並のルーキーなら合格だが、物足りなさは否めない。それだけ、前半戦の活躍は鮮烈だった。

開幕レギュラーを勝ち取ると、5月7日にはドラフト制度以降の新人では最速となる33試合目で2桁本塁打に到達。同28日、セ・リーグの新人では昭和33年の長嶋茂雄(巨人)以来、63年ぶりとなる1試合3本塁打を放った。7月のオールスターゲームにはリーグ最多得票で出場しただけでなく、第2戦で期待通り本塁打も飛び出した。

前半戦終了時点での成績は打率2割6分7厘、52打点、20本塁打。昭和34年の桑田武(大洋=現DeNA)と61年の清原和博(西武)による新人本塁打記録31本の更新も、射程にとらえたと思われた。

「後半戦は0点」

だが、東京五輪開催期間中の中断が明け、後半戦が始まると暗転した。

8月21日を最後に本塁打はおろか安打すら出なくなり、9月10日には2軍落ち。同23日に再昇格したが、「何かきっかけをつかんでほしい」という矢野燿大監督(52)の期待もむなしく凡退は続いた。2リーグ制となった昭和25年以降の投手も含めたセ・リーグ連続無安打記録を更新。10月5日に60打席ぶりとなる安打を放った際には「プロ野球は難しいな、とすごく思った」と素直な思いを吐露した。

今季最終戦の七回、中飛に倒れる佐藤輝。これがレギュラーシーズン最後の打席になった=10月26日、甲子園(松永渉平撮影)
今季最終戦の七回、中飛に倒れる佐藤輝。これがレギュラーシーズン最後の打席になった=10月26日、甲子園(松永渉平撮影)

今季最後のアーチを架けたのは、23号を放ってから2カ月余りが経過した同24日。今季の試合は、もはや最終戦しか残されていない段階だった。シーズンを終えた佐藤輝の自己評価は「50点」。前半戦は50点、後半戦は0点だという。

打球の方向がカギ

不振に苦しむ佐藤輝を、阪神のコーチ陣はどう指導していたのか。井上一樹ヘッドコーチ(50)は「荒療治がいいのか、(漫画『巨人の星』の)星飛雄馬の姉ちゃんのように遠くから見守るのがいいのか。僕らも模索はしてきた」と打ち明ける。

野球評論家の田尾安志氏(67)は、不振の原因は打球の方向から分かるという。「前半戦は自分のミートポイントまで球を呼び込み、逆方向(左翼方向)に打球を飛ばしていた。だが今はバットに当てようとするあまり、十分に球を引きつけていない。だから、打球が引っ張り方向に偏っている」

その上で調子を取り戻すために、打撃マシンでの練習の際に極端なオープンスタンスで打席に立ち、体の開きをねじり戻すようにして打つようにアドバイスする。「こうすれば、球を呼び込んで打つ感覚をつかむことができる。それだけで、彼の打撃は一変する」という。

レギュラーシーズン最終戦から、11月6日開幕のCSファーストステージまでの期間は10日間。佐藤輝はその間に宮崎県で開催されている2軍の秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」にも参加するという。その名の通りフェニックス(不死鳥)のようによみがえった姿を、CSで見ることができるだろうか。 (上阪正人)