話の肖像画

出井伸之(30)ドリーム・キッズよ永遠なれ

1967年、妻の晃代さんと南仏ジュアン・レ・パンにて
1967年、妻の晃代さんと南仏ジュアン・レ・パンにて

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《友人たちに感謝》

これまで僕を支えてくれた多くの友人を紹介してきましたが、僕には自分を入れて5人の知識のネットワークがあります。フランスの社会心理学者、ベルナール・アリアンさん、アメリカの元コンテンツ事業者、ジョン・オダンネルさん、インドの金融系の経営戦略のプロ、ケタン・パテルさん、それから日本の経営コンサルタント、山口峻宏さんの4人です。

残念ながら山口さんは亡くなられましたが、この4人からはさまざまな局面で助言をもらってきました。いつ何時でもメールを出せばすぐに返事をくれる仲です。

そして忘れてならないのは、ソニーの先輩でノーベル物理学賞を受賞された江崎玲於奈さんです。量子力学の世界で非連続の飛躍を意味するクオンタムリープという名前を会社につけたときには大変喜んでくれました。

また、これまで紹介できませんでしたが、株主総会でいつも最前列に陣取ってくれていたソニー入社同期の面々、優しく見守ってくれた上司、一緒に変革を戦ってくれた同僚や部下、歴代の秘書、クオンタムリープのメンバー、友人たちにも感謝しています。

《ソニーは「ドリーム・キッズ」の集まり。それは今までも、そしてこれからも》

僕を育ててくれたのはやはりソニーです。ドリーム・キッズである僕をそのままで働かせてくれ、卒業させてくれました。そしてソニーの外にいる今もなお、僕はドリーム・キッズです。

僕が管理者となっているフェイスブックページに「SONY大好きグループ」があるのですが、外国の人も含め、多くのソニーOB・OGもメンバーになっていて、さまざまなテーマで情報発信したり、共有したりしています。かつて自分がやっていた仕事や製品についての秘話を語ってくれる人もいれば、今チャレンジしていることを発信している人もいます。最近では、僕の元上司だった伊庭保さんもメンバーになってくださり、うれしかったです。

フェイスブックにアップされるものを読んでいても思うのですが、ソニーはドリーム・キッズの集まりでした。技術の分野だけではなく、財務や金融、物流、製造、営業、宣伝、デザインなど、さまざまな分野にドリーム・キッズがいました。そして自分のドリームも大切にするけど、他人のドリームも大切にし、実現へのサポートをするカルチャーがありました。それはソニーを卒業した後も続いています。フェイスブックに参加されている人の共通点はみな、今もドリーム・キッズだということです。

僕が知らないことを知っている人と会話をするのは非常に楽しいことです。そこで思い浮かべたことをすぐに相手にぶつけたくなります。新聞や雑誌、インターネットの記事などで、僕が知らないことが出てくるとすぐにネットで調べるか、本を買いに行きますね。それでも分からないことは、世界中の友人に聞いたりします。新しいことを知り、何に生かせるかを考える時間が楽しいです。

僕はこれからもドリーム・キッズでありたいですね。周りは苦労するかもしれないけど。そしてソニーもドリーム・キッズの集まりでいつづけてほしいと思います。

今回の連載の締めくくりとして、最後に、妻の晃代(てるよ)に感謝したいと思います。晃代は常に私の良きパートナーであり、アドバイザーでありました。特に、私の国内外の友人との関係ではサポートや助言をしてくれるなど、大きな役割を果たしてくれました。(聞き手 米沢文)

明日から横浜高校野球部元監督、渡辺元智さん。

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