産経抄

10月31日

秋の日の朝、公園で赤トンボのつがいを見かけた。空は前夜の雨に洗われ、日に照り映える水たまりの上を、雌雄が息を合わせて輪を描いている。水面(みなも)をちょんちょんと打つのはメスだろう。産卵のさなからしい。

▼彼らが命を植え付けている水たまりは、舗装道路のくぼみにあった。やがて干上がってしまうだろうに…と健気(けなげ)な姿に打たれつつ、「そこは違うんだよ」と教えてやれないもどかしさもあり、気分の晴れぬまま一日を過ごした。〈汲(く)まんとする泉をうちて夕蜻蛉〉。

▼まだ見ぬ子を水面に託す母トンボに、優しいまなざしを向けたのは俳人の飯田蛇笏だった。近頃は田んぼや水辺が少ないのか、濡(ぬ)れたアスファルトに産卵するトンボが珍しくないという。生涯の節目となる一大イベントで、選択を誤ったつがいが気の毒でならない。

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