AI産業の“一極集中”が新たな問題を引き起こすか ある研究論文の警告

ジャスミン・パクナンダは今年3月、カリフォルニア州オレンジ郡でコミュニティへの貢献を目指す最高経営責任者(CEO)の団体「CEO Leadership Alliance」のプロジェクト「Artificial Intelligence SoCal」を率いるため、同団体に加入した。

CEO Leadership Allianceはオレンジ郡のAI戦略の構築に取り組んでおり、最大7,000件のAI関連の雇用創出を目指している。起業家への資金調達や労働者の再訓練は、AI業界では少数派の女性や有色人種の人々を主な対象にしている。オレンジ郡の住民の多くは白人ではないのだ。

CEO Leadership AllianceのAI戦略は、自動化に伴う雇用喪失に対処する試みでもある。「これからどうなるのか、どの仕事が自動化され、影響されることになるのか、わたしたちは常に予測できるわけではありません」と、パクナンダは言う「それでもわたしたちは、人々に経済の変化に備えてもらうことも、いま就いている仕事が15年後も同じとは限らないことを知らせて覚悟してもらうこともできます」

大学のある街の可能性

ブルッキングス研究所の今回の論文は、21の大都市圏を連邦政府との契約で資金を得ている研究所のある地域として分類しており、その大半は人口20万人以下の“大学町”である。こうした都市のほとんどは大学のような機関が特徴で、連邦政府から多額の研究開発費を受けている。

いずれの都市もAI関連の人材を活用する機会はかなり多いものの、AI関連の経済活動はほとんどないという特徴がある。このような都市で経済活動が盛んにならなければ、AIを研究する大学院生や教授はビジネスチャンスを求めてどこかへ拠点を移しかねないと、論文は結論づける。

また大学のある街は、機械学習、高性能コンピューティング、半導体、高度なコンピュータハードウェアなどに焦点を当てることによって差異化を達成できると、ブルッキングス研究所の研究員は提案する。

これまでAI開発は政府の支援に頼ってきたが、さらなる公的資金の投入が予定されている。6月に連邦上院を通過した「イノベイション・競争法案」は、AIなど新たなテクノロジーへの財政支援を2,500億ドル(約27兆4,000億円)追加すると明記している。

一方、米国立科学財団(NSF)と連携する国立のAI研究機関の拡大に伴い、40州とコロンビア特別区に2億2,000万ドル(約241億1,563万円)が追加で投資される。AIを導入する都市になる可能性があるアトランタのジョージア工科大学は7月後半に4,000万ドル(約43億8,466万円)を受け取った。

海外の人材を引きつけることの重要性

AIが経済に与える影響には、連邦議会のリーダーも関心を寄せている。1年前に開かれた公聴会で専門家は、AIが賃金や雇用に影響しかねないと証言した上、自動化によって労働者が機械やアルゴリズムに取って代わられるにもかかわらず、新たな仕事はほとんど生まれない恐れがあると説明した。

連邦議員は、米国が海外出身の人材を引きつけ、引き留めておく能力がAIの時代にも引き続き重要な役割を果たすという証言も聞いている。20年1月のNSFの調査では、1990年代以降、理工学系大学の卒業生のうち国外出身者の人数が着実に増加し、コンピュータ科学の学位取得者の10人中6人は外国生まれであることがわかった。

4月に発表された全米経済研究所(NBER)の調査によると、2000年以降、米国のAI関連で増加した雇用の大半は外国生まれの労働者が占めているという。この分析は、オースティン、ボストン、サンフランシスコといったテック業界の中心地でAI関連の産業活動が成長している背景として、コンピュータ科学や工学の学位をもち米国に移民した海外出身の男性によるところが大きいと結論づけている。