AI産業の“一極集中”が新たな問題を引き起こすか ある研究論文の警告

アーリーステージのAI開発の支援や、人材を地元企業へつなぐルートの構築が可能な大都市は、AI産業が成長を続ければ利益を得るだろう。そうした能力がない大都市は後れをとるかもしれないが、AIの導入が進むと自動化による雇用喪失などのマイナス面も生じかねない。

ブルッキングス研究所のムロによると、米国はAIの特定地域への過度の集中がよりいっそう進む前に、国内のほかの地域に投資したほうが賢明だろうという。

AIの大都市以外での成長余地

今回の研究では、アトランタ、シカゴ、デトロイト、ヒューストンのような大都市のほか、インディアナ州ブルーミントン、ジョージア州アセンズのような大学を擁する街など、米国の約90の都市がAI関連のより多くの雇用や資源をそれぞれの地域社会にもたらしうることがわかった。

ムロと論文の共同執筆者のシファン・リュウは、優れた研究能力と投資能力がないままAI開発を推進することは難しいという事実を踏まえ、各都市に地元のAI支援のための「極めて現実的な」計画の策定を働きかけている。ふたりはAI関連の人材の誘引および確保、高校やコミュニティカレッジでの教育機会の拡大、AI関連企業への優遇税制の検討といった計画に重点を置くよう、各地域に提案している。

ムロはまた、地元の企業や産業に有意義なAI使用事例に的を絞り、地元のAI企業と政府に契約を結ばせてほかの都市との差異化を図る政策を提唱する。同論文のアーリーアダプターに分類される都市が示す通り、テック企業以外の分野でAIが成長する余地は十分にある。

労働市場データベース「Burning Glass」の分析で今回の論文に採用されているデータによると、ネブラスカ州リンカーンでAIの最大の導入企業はアメリカン・エキスプレスだった。カリフォルニア州ロサンジェルスやサンタクルーズの場合はサイバーセキュリティ企業のCrowdStrikeが該当する。ワシントンD.C.では金融サービス企業のCapital Oneとコンサルティング企業のブーズ・アレン・ハミルトンがAIの主な導入企業である。

また、サンディエゴやケンタッキー州ルイビルのような都市のリーダーは、地域でのAI需要を評価する措置をすでに講じている。

雇用喪失に対処する試み

19年のブルッキングス研究所の報告書は、自動化による雇用喪失で極めて深刻な影響を受ける州にケンタッキー州が含まれると予測した。今年4月、同研究所の大都市圏政策プログラムは、ケンタッキー州最大の都市ルイビルに対して状況に応じるための政策を提案している。その提案が記載された報告書は、医療に関するAIやデータの解決策について、米中西部や南東部の都市との連携を示唆している。

さらに報告書は、米国勢調査局が毎年実施する米国コミュニティ調査(ACS)によると、ルイビルのデータ経済で働く黒人は不当といえるほど少数であり、米中西部や南東部の多くの大都市における同業種の黒人労働者よりも少数派であると記している。警官によって黒人のブレオナ・テイラーが殺害されたルイビルでは、地域の政策の正当性はいずれも、その政策が黒人の住民やコミュニティに機会をもたらしているか否かに左右されると、報告書は強調する。