プロ野球はセ、パ両リーグともシーズン最終盤まで優勝争いがもつれ、目が離せなかった。
セはヤクルトが6年ぶりに、パはオリックスが25年ぶりに制した。前年最下位のチームが両リーグそろって優勝するのは史上初だ。
ともに2年連続最下位から頂点に立ち、ファンやメディアは「下克上」と盛り上がっている。昭和25年の2リーグ分立後、2年連続最下位からの優勝は昨季まで5例のみだ。プロといえども、下位が短期間で状況を覆すのは簡単ではない。それだけに、V字回復をもたらした両監督の手腕は称賛されていい。
ヤクルトは投手5、6人の継投で勝った試合が多い。目を引いたのが投手の配置転換だ。投手出身で今季2年目の高津臣吾監督は、先発や抑えで振るわない投手を2軍ではなく試合中盤の要所で救援に用い、腐らせなかった。野村克也元監督の「再生工場」を重ねたファンも多いのではないか。
オリックスの中嶋聡監督は捕手出身だ。2軍監督だった昨季途中から1軍の監督代行を務め、今季から正式に指揮を執っている。
32本塁打を放った30歳の杉本裕太郎、高卒2年目でレギュラーに定着した紅林(くればやし)弘太郎らは2軍時代から目をかけてきた選手だ。過去5年で9本塁打と伸び悩んだ杉本を今季は4番に据えて開花させた。不確実性のある選手を我慢強く使い続け、プレーに専念できる環境を整えたのは全体に目を配る元捕手ならではの采配だろう。
オリックスは過去20年でAクラス入りが2度しかなかった。低迷からの脱却は、球界全体の活性化につながるはずだ。
両チームは、セ、パの上位3球団で争うクライマックスシリーズ(CS)で日本シリーズ出場を目指す。白熱の戦いで、さらにファンを熱狂させてほしい。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、今季のプロ野球ファンは推計2279万人で、この10年間で937万人も減ったとみられるという。
「下克上」を球界活性化の転機とするためにも、CSの仕組みは再考が必要だ。シーズン終了時のゲーム差に応じて上位球団にもう1勝を加えるなど改善の余地がある。シーズンを負け越した3位球団が参加できる現行制度は、シーズンの価値を下げないか。球界は議論を避けてはならない。