今回の衆院選は当初、新型コロナウイルスの感染拡大期に投開票日を迎えることも想定され、各地の選挙管理委員会は投票率の低下を懸念。投票所の拡充などに腐心した結果、期日前投票は好調に推移した。コロナ対策という身近なテーマが選挙の主要な争点となり、候補者からは「これまで選挙に行かなかった有権者の投票も期待できる」という声がある一方、全体の投票率アップにつながるかは未知数だ。
衆院選の投票率は平成2年の73・31%から低下傾向にあり、期日前投票が導入された17年の郵政選挙、民主党への政権交代が起きた21年の総選挙などでは前回比で上昇したものの、26年には52・66%と過去最低を記録。東京都の小池百合子知事率いる「希望の党」が話題をさらった29年の前回選挙は微増したが、53・68%にとどまった。
総務省は今回、コロナ禍も踏まえ投票所の密集を避けるため、各自治体の選管に対し、期日前投票所の増設や、バスなどを使った移動期日前投票所の活用、ホームページで投票所の混雑状況や混雑予測を発信することなどを要請した。
東京都は29年の前回より19カ所多い315カ所で期日前投票所を開設。28年に全国に先駆け移動期日前投票所を導入した島根県浜田市では、今回も山間部を巡回するワゴン車内で期日前投票を行った。
こうした取り組みも奏功し、期日前投票者数は29日までの10日間で前回から約100万人増え、前回比1・06倍と微増。21年と29年は期日前投票者数と投票率がともに上昇しているが、今回も投票率全体に反映されるとはかぎらない。
投票行動などに詳しい神戸大大学院の品田裕教授は「政権交代時のように、分かりやすい対立軸が強調されれば、投票率向上に結びつく」と指摘。今回は「野党共闘が成功するなどした接戦区では盛り上がりもみられるが、政権交代の現実味が薄いため、全体として投票率が大きく上がるとは考えにくい」と話す。
コロナ対策という身近な話題が争点ではあるが、「給付金支給など各党とも似たような主張ばかりで、投票率アップにつながるかは不透明だ」とみている。