【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO・本部ジュネーブ)は29日、来年5月の総会で決定する次期事務局長について、9月下旬に締め切った候補者の届け出が現職のテドロス氏以外にいなかった、と発表した。対立候補が出なかったことで、テドロス氏の再任は、ほぼ確実となった。
テドロス氏はエチオピアの出身。2017年に事務局長に初のアフリカ出身者として就任した。来年5月の総会で正式承認されれば同年8月中旬から2期目に入る。任期は5年。再任は1回だけ認められる。
WHOによると、フランスとドイツ、スペイン、カザフスタン、ケニアなど計28カ国がテドロス氏を候補者として指名した。日本や米国、英国、中国、ロシアはこれに加わっていない。
テドロス氏は、エチオピアで昨年11月から連邦政府と紛争状態にある「ティグレ人民解放戦線」(TPLF)が中枢を担った旧政権で保健相などを務めた。現政権との関係は良好ではなく、エチオピアから候補指名は受けられなかった。
テドロス氏は新型コロナウイルス問題で、ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」の立ち上げを主導するなど、途上国の感染対策を支援した。
一方で、テドロス氏は新型コロナをめぐり、中国に配慮する傾向が指摘されてきた。WHOは昨年1月22日、医療機関の検査態勢整備などを促す「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送った。その8日後の30日に宣言を出したが、緊急事態宣言を避けたかった中国当局の意向を、テドロス氏が〝忖度(そんたく)〟したとの見方がある。