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平和条約なしで日露友好可能 露高等経済学院 世界経済・政治学部助教授 イーゴリ・ラズモフスキー氏

ロシア高等経済学院 世界経済・政治学部助教授 イーゴリ・ラズモフスキー氏(小野田雄一撮影)
ロシア高等経済学院 世界経済・政治学部助教授 イーゴリ・ラズモフスキー氏(小野田雄一撮影)

ロシアとの平和条約交渉の中心課題である南クリール諸島(北方領土)の帰属問題に関して、岸田文雄首相は「4島返還」を目指すとした。菅義偉前首相に続き、安倍晋三元首相が主導した実質的な「2島返還」路線を修正するものだが、岸田氏からすれば当然だ。

安倍氏は国内の批判を覚悟しつつ、4島返還よりも実現の可能性が高いとみて2島返還を目指した。批判に耐えられる強固な政権基盤を持つ安倍氏だけに許された特権だったためだ。

衆院選で自民党が勝ち、岸田政権が存続した場合、4島返還論に立ち返った岸田政権にとり、対露交渉はより困難になるだろう。島の帰属をめぐる立場を両国が譲れない以上、交渉で進展は期待できない。

しかし、重要なのは平和条約を結ばなくても露日間の友好は実現できる-ということだ。原動力となるのは経済の相互依存だ。エネルギー輸入国の日本はリスク分散の観点から調達先の多角化を模索しており、ロシアはその一角になれる。

「南クリール諸島などを経済特区とし、日本などに投資を呼びかける」というプーチン大統領の計画は良い提案だ。特区にロシアの法律が適用される以上、4島でのロシアの施政権を容認できない日本企業が進出する可能性はないだろう。私が「良い」というのは、提案が両国全体での経済協力に向けた雰囲気を醸成し得る-という意味でだ。

岸田政権が存続した場合、中小企業支援や新型コロナウイルス対策、防衛費増額といった公約の達成状況や、有権者の評価が焦点となる。特に、防衛費増額は有権者の理解を得られない可能性があり、野党の攻撃材料にもなる。公約への有権者の評価次第で、政権基盤が早期に不安定化する恐れは否定できない。(聞き手 モスクワ 小野田雄一)