露、天然ガスで親欧米のモルドバに圧力

ロシア国旗(ロイター)
ロシア国旗(ロイター)

【モスクワ=小野田雄一】世界的な天然ガス価格の高騰に乗じ、ロシアが東欧の旧ソ連構成国、モルドバで発足した親欧米派政権への政治圧力を強めている。モルドバはロシアにガス供給を100%依存しているが、ここにきてロシアとのガス供給契約の延長交渉が難航。ロシアは条件をのまねば11月にもガス供給を停止すると強硬姿勢だ。モルドバ支援に乗り出した欧州連合(EU)は、ロシアがガスを政治的「武器」にしていると批判している。

露主要メディアによると、モルドバは露国営ガス企業「ガスプロム」との供給契約を毎年更新してきたが、今年はガス高騰で契約更新交渉が難航。9月末の契約切れの直前、両者はモルドバが天然ガス1千立方メートル当たり790ドル(昨年の平均は同149ドル)を支払う条件で10月末までの短期延長に合意した。現在、11月分以降の交渉が行われているが、価格などをめぐる折り合いはついていない。

ガスプロムはモルドバ側に過去の未払金が7億ドル(約800億円)あるとし、契約更新には返済が必要だとも主張。モルドバ側の対応次第では、11月か12月にガス供給を停止する可能性があるとしている。

モルドバは今月22日、30日間の緊急事態宣言を出し、経済的優先度の低い分野などでのガス使用を停止。新たな調達先として隣国ポーランドと購入契約を結ぶなどした。ただ、必要量の確保は困難だとの見方が強い。

モルドバでは昨年末、親露派のドドン大統領から親欧米派のサンドゥ大統領に政権が移行。サンドゥ氏は国内の親露分離派地域「沿ドニエストル」にロシアが軍を不法駐留させていると批判し、旧来の対露協力の見直しにも言及した。今年7月の議会選でもサンドゥ氏の与党が勝利し、ロシアは危機感を強めている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は26日、ガスプロムがモルドバに対し、低価格でガスを供給する見返りに「EUとの貿易協定の見直しや、EUと合意した(ガス市場の自由化など)エネルギー改革の延期を要求した」と報道。ロシアがガス交渉を利用し、モルドバのEU接近に歯止めをかけようとしているとした。

EUは27日、モルドバにガス危機対策として6千万ユーロ(約80億円)の支援を表明。EUのボレル外交安全保障上級代表も28日、「ガスの武器化だ」とロシアを批判した。ロシアは過去にも対立するウクライナなどに、ガス供給を通じて圧力をかけた経緯がある。

ガスプロムはモルドバとの交渉について「利益確保や未払金の請求は企業として当然だ」と主張。ペスコフ露大統領報道官も27日、「交渉は純粋なビジネスだ」とし、政治的意図を否定した。