衆院選・兵庫の課題

「ものづくり県」に陰り サプライチェーン強化

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昨年、兵庫県内で新しく工場が立地された件数だ。全国6位だが、前年の48件から減少した。大阪をはじめ西日本各地への交通インフラが整備されている兵庫は企業にとって魅力的で、過去20年間で3度、工場立地件数で全国首位になっている。だが、昨年からの新型コロナウイルス禍は、製造業の多い「ものづくり県」兵庫の経済にも影を落とす。全国屈指の産業団地を支えるため、県はサプライチェーン(供給網)の強化を図っていく考えだ。

「大阪まで70キロほど。アクセスの良さから立地を決定した。新たな物流拠点として恵まれた場所だ」

こう話すのは、スーパーやコンビニエンスストアで販売される弁当や惣菜(そうざい)の包装容器などを生産する食品容器メーカー「リスパック」(岐阜市)の担当者。同社は3月、加西市の「加西インター産業団地」の用地を取得した。

これまで群馬や愛知などを拠点にしていたが、関西で初の工場を建設するにあたり、加西市を選んだ。約3万平方メートルの新工場は来年4月にも着工し、令和6年に完成予定だ。

担当者は「これを機に西日本エリアへの供給能力を増強し、新たな物流拠点としていく」と腕を撫(ぶ)す。

屈指の産業地帯

ここ20年間で、県内で1千平方メートル以上の工場用地が取得されたのは計1200カ所以上。交通インフラが充実している上、低コストで取得可能な用地も、働き手となる人口規模もあるという兵庫の特性が、工場新設を促進してきた。

ただ、近年は工場がやや飽和状態となり、建設用地が不足。工場立地件数で全国上位をキープしているものの、一時の勢いに陰りが出てきている。県産業立地室の担当者は「地域経済や雇用の波及効果を考えると、工場立地は多い方が望ましい」と危機感を示す。

そこで、県は県内各地の産業団地を拡大し、用地確保を計画。リスパック社が進出する「加西インター産業団地」もその一つだ。

加西市や西脇市、三木市などからなる北播磨地域は山陽自動車道と中国自動車道に近く、神戸空港や伊丹空港へのアクセスも良く、京阪神経済圏のみでなく中国、九州地方へも製品を届けることができる。

都市部と比べて土地も安く、これまで県の工場立地件数を牽引(けんいん)。昨年は11件で、神戸市(8件)を上回った。県も地元自治体も、産業団地の拡大によって、さらに多くの工場を呼び込むポテンシャルを秘めていると期待を寄せる。

新型コロナ直撃

工場誘致が再び勢いづき、地元経済の活性化につながる。そんな青写真をコロナ禍が直撃した。

県内の事業所の利益額などを示す地域内総生産額は、昨年度で約20兆円。29年度と比べると、7千億円減少した。消費は低迷し、工場も海外からの物資の供給が停滞。入国制限により外国人労働者の確保も困難となり、生産減につながった。先行きの不透明さから、企業が設備投資に慎重になることも懸念される。

コロナ禍にも耐えられる生産体制に向けて求められるのは、国外に依存していた部品の生産拠点を整備し、県内で完結するサプライチェーンの構築。需要が増した医療物資・機器などに着目した工場誘致にも、伸びしろが期待できる。

「生産が滞っている企業もあるが、生産施設の新増設を支援して、産業を活気づけていきたい」と県の担当者。コロナ禍で全国、全世界が一様に打撃を受けた今こそ、兵庫の底力が試されるときだ。(鈴木源也)