家族がいてもいなくても

(708)たくましきかな、高齢者

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

緊急事態宣言が解除になったら、忙しくなった。

中止だった仕事が復活しちゃうし、東京の家族から「今週来られる?」と打診がくるし、友人からは「那須の温泉に行く!」なんて誘惑もあるし…。

そんな中、山がうっすら白くなりいよいよ冬支度が始まった。

今年は、天候が乱れに乱れ、寒さに震えあがったと思ったら、ぽかぽか陽気に戻ったり、いきなり木枯らしが音を立てて吹き始めたり…。

しかもコロナウイルスの第6波が襲ってくるかもしれず、風が吹くたびにばらばら落ちるドングリの音に、「宮沢賢治だわ」とうっとりしている暇もない感じ。

とりあえず、来るべき冬に備えて、私はペレットストーブの煙突の点検をした。

ネジ回しで煙突を分解したとたん、煤(すす)がドサッと出てきてびっくり。春にやったつもりの煙突掃除を実は怠ったらしい。

「もう、なにやってたのよっ!」と自分で自分を厳しく叱りつつ、「このままストーブを焚(た)いたら、どんなことになっていただろう」とゾッとしてしまった。

きっと部屋中がもうもうと煙に覆われ、いや煤が燃えて大騒ぎ、なんてことになりかねなかったかもしれない。

急ぎ、ストーブの取扱説明書にあるメンテナンスの解説を気を入れて読み直し、本体の方もあちこち分解して、点検掃除をした。

思えば、都会に住んでいたときは、なんでもかんでもお金で解決。

自力でやっていたのは、蛍光灯の取り換えぐらいだったなあ、と思う。

今や、草刈り機の歯のナイロンコードの取り換えも自分でするし、家具の組み立てもする。

重いものも頑張って運ぶし、帽子やネックウォーマーも自分で編んだ。

部屋には、電動ドリルや電動ノコギリなどの工具も増え、とりあえず自分でやる、が常態となった。

愛車も軽のワゴン車で、なにかと荷物を載せたり、降ろしたり、運んだり。

いつのまにか腕っぷしも強くなったようで、「あなたって、力持ちねえ」と言われたりしている。

スーツも着ないし、革靴も履かないし、革のバッグも持たないし…。

自然の美しさの中で、のんびり暮らそうと、山里にあるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)なんてとこに来たつもりだったけれど、なんだか年々、「自立自助」のたくましい高齢者として、人生を生き直している気がする。(ノンフィクション作家 久田恵)