北で紙幣用紙まで枯渇 正恩氏「米一粒残さず収穫せよ」

朝鮮労働党創建76年の記念日に演説する金正恩党総書記=10日、平壌(朝鮮中央通信=共同)
朝鮮労働党創建76年の記念日に演説する金正恩党総書記=10日、平壌(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】新型コロナウイルス対応で国境封鎖を続けてきた北朝鮮で、紙幣用紙や特殊インクの輸入が滞り、苦肉の策として、国産用紙で臨時紙幣を発行していることが分かった。韓国の情報機関、国家情報院(国情院)による非公開での国会報告に出席した議員が29日までに明らかにした。

医療品不足で腸チフスなどの伝染病も蔓延(まんえん)。食糧難から、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は「薄氷の上を歩く思いだ」と吐露しつつ、「米一粒残さず収穫せよ。飯を食う者は全員、農村支援に行け」と軍や国民の動員を命じたという。例年より早く今月20日ごろには稲刈りを終え、今年の収穫量は水害に悩まされた昨年を上回ると予測されている。

国情院は、北朝鮮が経済難の深刻化を受け、11月から中国との間の鉄道運行を再開する可能性があるとの見通しも示した。7月以降は、船舶による緊急物資の搬入を増加させてきた。

一方、党の会議場に掲げられていた金日(イル)成(ソン)主席と金正(ジョン)日(イル)前総書記の写真が撤去され、「金正恩主義」という用語が内部で使われ始めたことも報告された。間もなく正恩氏の最高指導者就任10年になるのを前に、祖父や父の権威に依拠した統治から脱却し、独自の思想体系を確立しようとする動きとみられている。国情院は、妹の金与(ヨ)正(ジョン)党副部長が外交・安全保障を統括しているとの見方も示した。

国情院はまた、一部で取り沙汰された正恩氏の「影武者説」について「事実ではない」と断定。健康に特に問題は見られず、正恩氏が2019年の体重約140キロから約20キロ減量したとの分析も明らかにした。国情院は、人工知能(AI)や顔の肌のトラブルが分かるほど精密な映像分析を駆使して正恩氏の健康状態の把握に努めているという。