話の肖像画

元ソニーCEO、クオンタムリープ会長、出井伸之(83)28 サラリーマンよ冒険心を持て

クオンタムリープの仲間たちと(本人は中央)=令和元年12月、東京都内(クオンタムリープ提供)
クオンタムリープの仲間たちと(本人は中央)=令和元年12月、東京都内(クオンタムリープ提供)

《人間万事塞翁が馬。挫折感を味わってきた》


僕はソニーで初めてのサラリーマン社長でした。挫折感を味わったことも数多くありましたが、今から振り返ると、その挫折を通じて得たことを後で生かすことができました。

本社の意思に反した結果、フランスから帰国を命じられて物流部門に配属され、ショックでしたが、ここでコンピューターと出合いましたし、物流の重要性も学びました。パソコン事業の立ち上げに失敗しましたが、それが「VAIO(バイオ)」につながりました。大賀典雄さんには何度も「クビだ」と言われましたが、デザインやブランドに対するこだわりを学びました。

どんな仕事にも将来に生かせる何かがあります。それには挫折を楽しむぐらいの気持ちが必要です。何も失敗しないサラリーマンよりも、失敗を糧にしたサラリーマンの方が強い。同じ失敗を繰り返すようでは駄目ですが、冒険心を持ってチャレンジしてほしいと思います。


《人との出会いが新しい可能性を生む》


僕は人との縁、つながりがいかに大事かを、これまでの経験から実感しています。さまざまな人との出会いから、インスピレーションを受け、新たなアイデアや課題への解決策を思いついたりしました。出会った人とのつながりを続けるように心がけましたし、また常に新しい出会いを求めてきました。

僕がソニーの社長になったときも、経営者としての考え方を学ぶ必要があると思い、財界の先輩方にメンター(助言者)になっていただきました。東京電力の平岩外四さん、資生堂の福原義春さん、電通の成田豊さん、三井住友銀行の西川善文さん、日本IBMの椎名武雄さんには親身に助言をいただきました。

サラリーマンである以上、社内の人脈づくりも大事ですが、社外にもネットワークを作ることが大事です。勇気を持って外に出ることが重要です。


《出会いの場を作ってきた》


出会いの場の重要性を認識していたので、ソニー内で「ソニーユニバーシティ」という研修会をつくりました。グループ内の技術系や事務系、エンタメ系、金融系の各社から将来の経営幹部候補を選び、「あなたが将来ソニーのCEOになったら」というテーマで1年間勉強をさせるというものでした。僕の真の目的は生徒間の相互理解とネットワークを作らせることにありました。

1期生には今のソニーグループCEOの吉田憲一郎さんがいましたし、2期生には副会長の石塚茂樹さんがいました。吉田さんはテーマ通り、CEOになったのですが、グループ内のさまざまなビジネスの理解とネットワークが生きたのではないでしょうか。

クオンタムリープでは「クラブ100」という会員組織をつくり、毎月講演会兼交流会を開いています。コロナ禍でも途切れることなく、今月で166回目になります。さまざまな会社がお互いに刺激しあって新たなビジネスが生まれるように心がけています。

大企業は人材の宝庫です。大企業とベンチャーの連携を推進することが僕のテーマではありますが、日本のベンチャーの成長には、大企業での経験を持つサラリーマンの力が必要です。

そのためには、サラリーマンが自分の価値を常に意識することと、ベンチャーに飛び込む冒険心を持ってほしい。実は僕自身もサラリーマン時代、何度か外部の人に自分の評価をしてもらったことがあります。

これからも自分自身の出会いの場や、人と人の出会う機会をつくっていきたいと思っていますし、冒険心を持って行動していきたいと考えています。(聞き手 米沢文)