衆院選・兵庫の課題

全国ワーストの転出超過、県内地域格差も懸念

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兵庫県から転出する人が転入者を上回る「転出超過」(日本人のみ)の人数だ。令和2年の住民基本台帳人口移動報告によると、全国の都道府県でワースト1位だった。最大の原因は、就職を機に東京や大阪に流出する若者が多いこと。若い世代をどうつなぎ留めるかが、人口減少が進む県全体の喫緊の課題となる一方、県内の自治体間で人口の取り合いのような状況が生まれ、地域格差の拡大という問題も浮き彫りになっている。

「雇用も少ない、通える大学もない…。何十年も若者を市外に送り出すことを繰り返してきた」。県内で人口減少率5位、高齢化率は4割近い養父市の広瀬栄市長は、苦渋の表情を浮かべる。

同市は平成26年、安倍晋三内閣が規制改革の突破口に位置付けた「国家戦略特区」の農業特区に手を挙げ、第1弾に認定。企業による農地取得を認める特例措置が適用されるなどし、これまでに13社の企業が参入、約100人の雇用が生まれたという。

これによって養父市の人口減少にたちまち歯止めがかかるわけでないが、広瀬市長はこう力を込める。

「若者が(進学などで)一度は出ていくのは仕方ない。市が挑戦している姿勢を見せることで、若者に戻ってきたいと思われるように努力するしかない」

コロナ禍で加速

県によると、令和2年の転出超過人数のうち、20~24歳は5987人で、全体の約8割を占めた。大学などを卒業後、就職を機に大阪や東京に出るケースが多いとみられる。

人口減少の要因には、出生数と死亡数の差による「自然減」と人の移動による「社会減」がある。県は同年、第2期県地域創生戦略で「2024年までに日本人社会減ゼロ」という目標を設定。「当時からかなりハードルの高い目標だった」(担当者)が、新型コロナウイルス禍が状況をより悪化させている。

コロナ禍で転勤縮小やオンライン授業導入などが進み、全国的に大規模な移動が抑制される傾向が強まった。これに伴って県内から東京への転出者は減少。ところが、大阪への転出者は増加し、これまで多かった九州などからの転入者が減少した。

結果、県内の転出超過は、令和元年の全国ワースト4位(7260人)から最下位に転落した。

激化する人口獲得競争

人口減少が進む中、若者や子育て世帯を呼び込む施策を掲げ、人口増に転じている自治体もある。

明石市は、第2子以降の保育料無料化などを目玉とする手厚い子育て支援で、子育て世帯の転入を増やし、人口30万人を突破。神戸市は結婚や出産、親との近居・同居などを機に住み替えを検討する人たちを住宅補助で支援している。

こうした都市では、人口増加で街が活性化し、また人が集まるという好循環が期待できる。ただ、県全体の人口が減少の一途をたどる現状では、自治体間の人口獲得競争も、先細るパイの奪い合いという面が否めない。人口増の自治体は大阪への交通の便のよい県南東部に集中しており、地域格差のいっそうの広がりも懸念される。

地方の雇用やまちづくりなどに詳しい甲南大の阿部真大教授は「今の地方創生は自治体が人集めの自由競争をしている状態で、成功した地域だけが生き残るやり方だ」と指摘し、提言する。「うまく人を集められた自治体は新しい形で再生していくだろうが、競争からこぼれ落ちた地域が切り捨てられることのないよう、国全体で考えていくことが必要になる」(福井亜加梨)

31日の衆院選投票日を前に、県が抱える課題を数字で探る。