追い風も逆風もなし 手応え感じられない与野党

演説を聞く有権者たち=28日午後、横浜市西区の横浜駅西口(矢島康弘撮影)
演説を聞く有権者たち=28日午後、横浜市西区の横浜駅西口(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相(自民党総裁)は28日、衆院選(31日投開票)に向け東北や北陸などの接戦区を中心にチャーター機も駆使して自民候補の応援演説に回った。立憲民主党の枝野幸男代表ら各党党首も各地で支持を訴えたが、今回の衆院選では与野党ともに「追い風」も「逆風」も実感できない陣営が多い。4日発足の岸田政権には「ご祝儀相場」と呼ばれるほどの勢いは感じられず、野党に期待が集中している兆しもない。報道機関の情勢調査結果も傾向が一致せず、有権者の動向をつかめない与野党に焦りが募っている。

「みんなが就職氷河期のような思いをしない、絶対させないという決意で必ず政策を実行していく」

28日に東京都内で行われた自民候補の街頭演説で、安倍晋三元首相は聴衆にこう訴えた。沿道には大勢の支持者が詰めかけたが、ある都連関係者は「新政権誕生の風は全く感じられない」と話す。

自民にとって最近の衆院選は「安倍人気」もあって大勝を重ねてきた。4年前の前回も「希望の党」を率いた小池百合子都知事の「排除」発言などで希望が失速し、結果的に自民に追い風が吹いた。

ところが今回は、候補者の不祥事などで局地的な「逆風」「追い風」は吹いているが、全体として特定の政党に支持が集中している様子は見られない。自民の閣僚経験者は「今回は吹いたとしても、そよ風程度だ」と語る。新型コロナウイルス禍で有権者との接点が減っていることも手応えをつかめない原因との見方もある。

「無風」は報道各社の世論調査にも影響を及ぼしているとみられる。終盤情勢について、産経新聞は26日付朝刊で「自民 単独過半数へ攻防」と報じた。一方、朝日新聞は同日付朝刊で「自民 過半数確保の勢い」とし、共同通信の配信記事は「与党、絶対安定多数(261議席)視野」と、ばらつきが出た。

報道にいらだちをぶつける野党幹部もいる。立民の福山哲郎幹事長は25日、ツイッターで「『自民党単独過半数をうかがう』とか『単独過半数確保の勢い』とありますが、それはすでに40数議席以上も減らすということですよ。勢いがあるわけないでしょう」と指摘。「真実は『自民党現有議席を大幅減、単独過半数は微妙』です。勢いはこちらにあります」と訴えた。

一方、ある共産党候補は27日、情勢調査によって予想獲得議席数が異なることを踏まえつつ、「どこに投票するか決めていない人がたくさんおられます。これからの奮闘次第で結果は大きく変わるということです」と書き込んだ。

そこで注目されるのが、無党派層の動向に左右されやすい投票率の行方だ。複数の野党候補が出た選挙区が多かった前回は過去2番目に低い53・68%だった。盛り上がりに欠ける今回、大幅アップは見込めそうもなく、50%を割れば初めてとなる。結局は、与野党ともに候補者の日頃の努力が勝敗を分けることになりそうだ。(今仲信博、原川貴郎)