上方歌舞伎の名優に別れ 坂田藤十郎さんしのぶ会

花々で彩られた祭壇に飾られた坂田藤十郎さんの写真は、やわらかい表情を浮かべていた=28日午後、東京都港区(松井英幸撮影)
花々で彩られた祭壇に飾られた坂田藤十郎さんの写真は、やわらかい表情を浮かべていた=28日午後、東京都港区(松井英幸撮影)

昨年11月に88歳で死去した人間国宝の歌舞伎俳優、坂田藤十郎さんをしのぶ会が28日、東京都内のホテルで開かれた。新型コロナウイルスの影響で、死去から1年を前にしての開催。各界の著名人ら約千人が花をたむけ、上方歌舞伎の再興に尽くし、歌舞伎界の頂点に立った名優に別れを告げた。

みずみずしい美しさと、迫力

華やかな歌舞伎人生にふさわしく、花々で華麗に彩られた祭壇。文化勲章をかけた遺影の表情はやわらかく「河庄(かわしょう)」の治兵衛など、いかにも上方の二枚目を得意とした人らしい。飾られた約70枚の舞台などの写真は、みずみずしい美しさと、迫力にみちあふれていた。

「芝居のことしか分からない人でした。芝居が好きで、最後まで舞台を全うした。入院しているときも、朝、目覚めると『今日、南座、何時入り?』と聞くんです。それほど芝居一筋の人でした」。妻の扇千景さんは、涙ぐみながら祭壇の遺影を見上げた。

報道陣の取材に応じた坂田藤十郎さんの妻、扇千景さん(中)と長男の中村鴈治郎さん(右)、次男の中村扇雀さん=28日午後、東京都港区(松井英幸撮影)
報道陣の取材に応じた坂田藤十郎さんの妻、扇千景さん(中)と長男の中村鴈治郎さん(右)、次男の中村扇雀さん=28日午後、東京都港区(松井英幸撮影)


昭和28年「曽根崎心中」でお初を演じ、一躍スターになった。平成17年には上方歌舞伎の伝説の名跡「坂田藤十郎」を231年ぶりに襲名。上方歌舞伎の隆盛に尽くした。6年に人間国宝に認定され、21年には文化勲章を受章した。

長男の中村鴈治郎(がんじろう)さんは「父はいつも上方歌舞伎と江戸歌舞伎が両輪として栄えることが大切と言っていました。弟の扇雀(せんじゃく)とともに、父の思いを全部背負っていきたい」と話す。

親子としての会話はあまりなかったが、扇雀さんには一生の思い出がある。「私が2度目のお初を大阪松竹座で演じたとき、稽古を見てくれた父が一言『うれしかったよ』と。一生忘れられません」

毎年12月恒例の京都・南座の顔見世興行。今年は藤十郎さんの三回忌追善として、「曽根崎心中」などが上演される。「父の思いが伝わるよう演じたい」。鴈治郎さんは力を込めた。(亀岡典子)