九州歴史資料館(福岡県小郡市)は28日、特別史跡大宰府跡の今年度の発掘調査で、太宰府市観世音寺の同跡・蔵司(くらのつかさ)地区南側の総柱礎石建物の基壇から、甲冑(かっちゅう)の部材である鉄製小札(こざね)1枚を発見したと発表した。鉄製小札は神への捧げものである鎮壇具(ちんだんぐ)として使われたとみられ、九州では初の出土という。
同資料館は、大宰府政庁の財源を管理した蔵司について、平成21年度から今年度までの予定で発掘調査をしている。出土した鉄製小札は縦5・7センチ、幅2・7センチで、上半分は欠落。昨年度の調査で見つかった総柱礎石建物の4個の礎石の中央の基壇に置かれていた。
製作年代は、形状から8世紀前半の奈良時代とされるが、倉庫とみられる建物が建設されたのは9世紀前半の平安時代で、約100年間大事に保存されていた甲冑が鎮壇具として使われたとされる。同資料館によると、こうした武具の使われ方は奈良の平城京などでみられ「基壇の上に建てられた建物の用途を推定する重要な手掛かりになる」としている。
今年度の発掘では南北を軸に設けられた溝や築地跡も出土した。同資料館は30日午前10時から同市観世音寺3丁目の発掘調査現場で現地説明会を開く。
(永尾和夫)