おなじみのタテジマのユニホームがグラウンドを駆け抜ける。だが背番号3の上には「OHYAMA」ではなく「MIURA」の文字が…。そうこのチームは、阪神タイガースが設立した女子硬式野球のクラブチーム「阪神タイガース Women(ウィメン)」だ。「埼玉西武ライオンズ レディース」に続く、NPBのプロ球団2番目の女子クラブチームとして今年1月に創設された。
クラブチームは、プロや実業団とは異なるアマチュアチームで、基本的に球団と選手は雇用契約を結ばず、年俸や給料などは支払われない。多くの選手が仕事や学業との両立だ。
日本女子プロ野球リーグの公式サイトによると、女子野球の競技人口は、学童野球を含め2万人を超える。硬式では高校や大学、プロなど約50チームが活動する。ただ、プロチームは今年7月、所属選手が0人となり、事実上の活動休止に陥った。
受け皿の一つがクラブチームで、タイガースWomenでは、入団セレクションを行い、選手を獲得している。元女子プロの選手や学生など18人が在籍する。
監督は元タイガースの野原祐也さん(36)。平成20年のドラフト会議で、阪神タイガースの育成枠1位に指名された。日本人選手としては初の育成選手から支配下登録となり1軍にも在籍。24年に戦力外通告を受けて、富山サンダーバーズに移籍、28年に現役を引退した。
普段の活動は週2、3回の個別練習と週1回の全体練習となる。場所は甲子園の室内練習場や鳴尾浜球場。試合も定期的に行われ、全日本女子野球連盟と関西女子硬式野球連盟に登録し、大会に参加する。今季の成績は13勝2敗。
チームのエース、植村美奈子投手(28)は昨季まで女子プロ野球に在籍し、10年間で66勝を挙げた。平日は警備会社で事務の仕事をしている。幼い頃から阪神ファンで、甲子園球場に足を運び、熱いプレーに元気をもらう。
初代主将の三浦伊織選手(29)は、11年間のプロ生活でMVPを3度受賞〝女イチロー〟の異名を持つ。
普段は阪神球団の職員としてタイガースアカデミーベースボールスクール専属コーチを務めている。「野球をやっている女の子が増えていくことが女子野球の普及につながる。阪神タイガースWomenに入りたいと思ってもらえるように取り組みたい」と笑顔をみせる。三浦さんらの就任でアカデミーに通う女の子が昨年の3倍になったという。
女子野球を象徴する選手へ―。虎のユニホームを着た阪神タイガースWomenは、その一歩を踏み出したばかりだ。聖地「甲子園」で女子選手の躍動するプレーが見られるときを心待ちにしている。
(写真報道局 水島啓輔)