3本足の「ゼノ」親譲りの嗅覚で警察犬に再挑戦へ

「臭気選別」の訓練をする一目散に訓練士の元へ戻る=奈良県橿原市
「臭気選別」の訓練をする一目散に訓練士の元へ戻る=奈良県橿原市

はねるように疾走する姿は、ハンディキャップをまったく感じさせない。警察犬を目指して練習に励む雄のジャーマンシェパード「ゼノ号」(8歳)。生まれたときのけががもとで右後ろ足はないが、警察犬だった親譲りの優れた嗅覚を持つ。昨年初めて挑戦した奈良県警の嘱託警察犬の審査会は緊張のため不合格だったが、あきらめずに29日、再度挑む。

今月初め、ゼノ号は奈良県橿原市の藤原宮跡近くの原っぱにいた。飼い主で東大阪ドッグスクール(大阪府東大阪市)の訓練士、山内未央さん(38)と練習する定番の場所だ。

「探しといで!」

山内さんが布のにおいを嗅がせて声をかけると、ゼノ号ははじかれたように駆け出した。布が5枚並べられた台の上から嗅いだにおいと同じものを選ぶ「臭気選別」の訓練だ。合っていたら次のにおいに。違っていればもう一度。繰り返し練習する。

すべての訓練メニューが終わると、山内さんからほめられ、ボールで遊んでもらえる。布をくわえて一目散に戻るゼノ号はうれしそう。訓練は週に2~4日、長くて30分で、山内さんは「訓練が外で過ごす楽しみの一つになれば」と話す。

ゼノ号の誕生は難産で、母犬が引っ張り出そうとして後ろ足の指が欠損。バランスを取りやすいように、生後半年のときに人の膝下にあたる部分を切断した。

山内さんは「ゼノ号の可能性に賭ける。やれるところまでは自分でさせよう」と考え、歩行の手助けなどはせずに見守った。包帯やサポーターなしで過ごせるようになったのは3歳ごろだったという。

警察犬を当初から目指していたわけではない。ただ「祖母」が奈良県警の嘱託警察犬、「父親」が兵庫県警の警察犬だったことから、「警察犬の血筋で、鼻がいいんだからもったいない」と周囲に後押しされることも。山内さんは「右後ろ足がないからといってこもるのではなく、挑戦も楽しみの一つにしてほしい」と、2年前から本格的に訓練を始めた。「自信がもてるような練習を重ねてきた。今年の審査会では焦ることなく、のびのびとやってほしい」と願う。

ゼノ号は1年ほど前から腰を痛めたり、階段の昇降をためらったりするようになり、鍼治療やマッサージで体のケアに努めており、山内さんは「少しでも長生きして、生き生きと暮らしてほしい」と話した。

警察犬は今や日々の捜査に欠かせない存在だ。奈良県警では昭和48年から民間で飼育訓練された嘱託警察犬を活用し、今年は34頭が所属。行方不明者の捜索や事件捜査への出動件数は、平成28年は18件だったが、令和元年は78件、2年は96件と右肩上がり。今年7月には、同県天川村の山中で遭難した大学教授の救助に嘱託警察犬が一役買い、話題となった。(前原彩希)