日米中露などの首脳が一堂に会する東アジアサミット(EAS)など東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合が27日、テレビ会議方式で開かれ、岸田文雄首相も出席した。首相は日ASEAN首脳会議で、東・南シナ海での中国の強引な行動を念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序に対する挑戦について、ASEAN各国と深刻な懸念を共有するとともに強く反対する」と述べた。北朝鮮による拉致問題解決に向けた協力を求め、各国から支持が表明された。
首相は一連の首脳会議出席後、記者団に「香港、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権状況や台湾海峡の平和と安定の重要性にも言及した」と明らかにした。同時に「東・南シナ海、拉致問題を含む北朝鮮、ミャンマーなど喫緊の地域情勢について毅然(きぜん)とした日本の立場を説明した」と述べた。
首相は日ASEAN首脳会議で「インド太平洋を自由で開かれた平和な海とすることは共通の利益だ」と訴えた。ASEAN各国からは、南シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設定する中国の動きを念頭に、南シナ海における航行・上空飛行の自由の重要性を強調する発言などがあった。
首相はまた、北朝鮮による弾道ミサイル発射を「地域や国際社会の平和と安全を脅かしている」と非難。クーデターで国軍が実権を掌握したミャンマーについては、民主派との対話をうながすASEANの取り組みを支持した。
27日はASEANプラス3(日中韓)首脳会議も開かれ、首相は新型コロナウイルス対策をめぐり、ASEAN各国にワクチン計1600万回分を供与していることを説明。デジタル改革やサプライチェーン(供給網)多元化でも協力する意向を示した。
EASは米国からバイデン氏が米大統領として約5年ぶりに出席した。トランプ前大統領は一度も出席せず批判を浴びただけに、EAS出席でアジア重視の姿勢を示した。米ホワイトハウスによると、バイデン氏は「インド太平洋に対する永続的な関与」を再確認し「開かれ、連結され、繁栄し、かつ強靱(きょうじん)で安全な地域」に向けたビジョンを説明。首相は中国を念頭に「東シナ海で日本の主権を侵害する活動が継続している」と指摘した。日本政府によると、複数の国から南シナ海情勢に対する懸念と香港などの人権状況に関して懸念の表明があった。