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災害教訓「伝える」仕組みを 熊本地震遺族 大和卓也さん(63)

花が供えられた祭壇から新阿蘇大橋の方向を見る大和卓也さん=熊本県南阿蘇村
花が供えられた祭壇から新阿蘇大橋の方向を見る大和卓也さん=熊本県南阿蘇村

なんとしても連れて帰る。捜索時はその一心だった。平成28年4月に発生した熊本地震で、当時大学4年だった次男が阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)付近の崩落に車ごと巻き込まれ、行方不明になった。川の下流で遺体が見つかるまで、約4カ月かかった。

日々わらをもつかむ思いだったが、熊本県や警察、消防からの情報が乏しく、非常にもどかしかった。張り詰めた緊張感の中、家族にとってはどんな少しの情報であっても知りたいものだ。毎年のように人命が奪われる大災害が発生している中で、適時・適切な情報提供と被災者や行方不明者の家族に対するケアが求められている。

災害で家族を失った一人として、有事の経験や知見をぜひ今後に生かしてもらいたい。国が主導し、これまでに得られた教訓をデータベース化するなど、自治体や関係機関がネット上で即時かつ自由に、その教訓にアクセスできる仕組みが必要だ。

いざというときに、頼りになるのは十分な備えだろう。被災自治体がこれまでどんな対応にあたり、どうすればもっとうまく対応できたか、学ぶ意義は大きいはずだ。

災害の多発する日本ではこれまでも多くの被災体験が重ねられてきた。しかし発災時こそ人々の関心が防災や減災へと傾くものの、時間の経過とともに、そうしたものも薄らいでいく。

だからこそ、教訓には人々の悲しみの記憶だけでなく、次の災害に備え、防災や減災につながる具体的な情報を含める必要がある。それを積み重ねていくことが、災害に強い社会を作ることにつながると思う。

国にはハード面の整備とともに、災害の教訓を「伝える」ことの仕組み作りに力を入れてほしい。

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