俯瞰的な記録から学ぶ関東大震災 発生100年前に映画公開

東京・日比谷公園野外音楽堂での野外学校(映画「關東大震大火實況」より、国立映画アーカイブ提供)
東京・日比谷公園野外音楽堂での野外学校(映画「關東大震大火實況」より、国立映画アーカイブ提供)

国立映画アーカイブ(東京都中央区)はこのほど、関東大震災(大正12年9月1日発生)の関連映画を公開するウェブサイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」を国立情報学研究所と共同で開設した。震災発生から100年の節目を迎える再来年に向け順次、所蔵する関連映画約20作品を公開する。

その第1弾として、文部省(当時)が監修し、全国規模で普及を図った長編記録映画「關東大震大火實況(かんとうたいしんたいかじっきょう)」(文部省社會教育課製作・配給、64分)が今秋、公開された。

関東大震災の死者・行方不明者は推定10万5千人とされる。震災発生から約1カ月間の様子が収められており、震災直後の状況だけでなく、救護態勢が徐々に整う様子や復旧復興に向けた動きなど、さまざまな事象が撮影されている。

この長編映画は震災翌月から2カ月間で、全国86会場で上映され、約10万2千人の動員数を記録した。国立映画アーカイブ特定研究員、栩木(とちぎ)章氏は「この映画の上映を通じて、大きなインパクトを持った未曽有(みぞう)の災害を全国レベルで共有するということが行われたのだろう」と分析した。

「地域検索」も可能

栩木氏はこの長編映画について「震災直後だけでなく、社会全体が震災にどのように対応していったかが俯瞰(ふかん)的に分かるようになっている。この映画を通して震災について学び得るものがあるのではないか」と評価した。

当時の記録映画には撮影された場所や日時などの詳しい情報が明示されていないケースが多い。今回、災害史の研究者に映像の調査を依頼し、撮影場所などを特定してもらったという。

サイトでは、こうした調査情報を基に映画の全編を閲覧できるだけでなく、千代田、江東、横浜といった撮影場所や火災・焼失などのシーンごとに分類された「クリップ」単位で検索・閲覧も可能だ。

「災害映像の場合、撮影場所を提示することも重要。自分が住んでいる場所やなじみのある場所にどのような震災の記憶・記録が残っているか、関心を抱いて追体験してみようという動機付けになるからだ」という。

所蔵する約20作品のほとんどは、発生直後の数日間に撮られたものという。同じ映像が重複して複数の作品に収められているケースもある。

今後は「関東大震災実況」(日活)、「大正拾弐年九月一日 猛火と屍(しかばね)の東京を踏みて」(ハヤカワ藝術映画製作所)、「帝都大震災 大正十二年九月一日」(製作会社不詳)などの作品が公開される予定という。

戦前期の映画公開も

国立映画アーカイブでは8万本以上の映画を収集、上映。できるだけ多くの人に見てもらおうと、数年前から配信という形で公開してきた。これまで「日本アニメーション映画クラシックス」、「映像でみる明治の日本」を配信。将来的には、戦前期の記録映画などを配信で公開したいとしている。

「1930年代半ば以降、戦局の激化とともに記録映画やニュース映画が盛んに作られた。当時の映像をみると、戦局の報道と同時に日常生活を収めた身辺雑記的な映像もたくさんある。当時の日本人の生活や習慣、風俗などを知る絶好の材料ではないか」(栩木氏)

(水沼啓子)

国立映画アーカイブ 独立行政法人国立美術館を構成する日本で唯一の国立映画機関で映画の保存、研究、公開を通して映画文化の振興を図る拠点。昭和27年に設置された国立近代美術館の映画事業(フィルム・ライブラリー)として始まり、前身は東京国立近代美術館フィルムセンター。