がん電話相談から

80代、今のうちに胃がん再手術を受けたい

Q 80代男性。今年1月、内視鏡検査で胃がんと診断されました。がんは11センチ×8センチと大きいのですが、深さは浅い早期胃がんである上、高齢で体力が低下しているため、負担の軽い内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を受けることになり、約5時間をかけ完全に切除しました。しかし、切除した細胞の病理検査で、胃がんがリンパ節に転移している可能性があることが分かりました。胃の近くのリンパ節と一緒に胃の全摘手術を受けるよう勧められましたが、体力的に自信がなく、他の病院で受けたセカンドオピニオンに従って経過観察をしています。でも今後、年齢を重ねると手術もできなくなるかと思うと、経過観察を続けてよいのか不安です。

A 主治医が手術を勧めた最大の理由はリンパ管の中にがん細胞が見つかったためです。こうしたケースではリンパ節に転移する可能性が10%程度あります。ただ、これは標準的な判断であり、患者の年齢や健康状態によっては判断が変わることがあります。例えば比較的若い40代の患者にとっては10%という再発率は無視できませんので原則として手術を勧めることになります。これに対し、相談者は80歳と高齢で平均余命は約9年です。また、手術の危険性も考慮する必要があります。胃全摘の手術死亡率はおよそ2%ほどですが、高齢者や健康状態不良の人だとさらに死亡率が高まります。10%のリンパ節転移の可能性と比べ、どちらがよいのかという話になります。ところで、これまで大きな病気にかかったことはありますか。

Q 脳梗塞を2回経験し軽度のまひなどの後遺症があります。

A 病気による体力低下も心配ですね。あなたの場合は、健康な人を基準にしたがん治療のガイドラインには必ずしもとらわれない方がいいでしょう。

今回の場合、がんの場所を考えると胃を全摘しなければならず、手術自体がうまくいっても、(少量しか食べられない)小胃症状や食道に食事が逆流することで誤嚥(ごえん)性肺炎が起きる心配もあります。食事がスムーズに取れなくなることで栄養状態が悪化して筋力が低下し、生活全般の質が低下するのは避けられません。

一方で、今のところがんが出血や狭窄(きょうさく)などの悪さをしているわけではないので、手術を受けたら症状が改善する、という状況ではありません。年齢、体調、手術を受ける場合のダメージの大きさを総合判断すると、今回の場合、経過観察をしようという結論になるでしょう。

Q 今後は定期的検査で転移がないか見てもらえばよいのですね。

A 厳重に経過観察をしてリンパ節が腫れてきたり、胃の治療部位に再発が出てきたりしたら、その時点で体力が許せば治療するという選択肢もあります。なお、検査を受ける間隔はずっと3カ月ではなく、6カ月程度に長くしても良い場合もあります。そして5年が経過したら2年に1回程度でよいでしょう。これらの検査は再発だけでなく、新しくできるかもしれない胃がんや、逆流性食道炎によってできる食道がんなどのチェックにも役立ちます。ただし、胃内視鏡検査や造影CT(コンピューター断層撮影)検査には(ひばく)など体への影響がありますので、必要以上に頻繁に受けることは避けた方がよいでしょう。

回答は、がん研有明病院名誉院長で、消化器外科が専門の山口俊晴医師が担当しました。

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