主張

阿蘇山噴火 観測と研究が防災の要だ

阿蘇山(熊本県)の中岳第1火口で20日正午前に噴火が発生した。

噴煙は高さ3500メートルに達し、火砕流は最大で火口から1・6キロ地点まで流れ下った。噴火に伴い、気象庁は噴火警戒レベルを「入山規制」(レベル3)に上げた。噴火時に中岳付近にいた登山者16人は全員下山し、人命にかかわる被害はなかった。

噴火に直結するとみられるような前兆現象はなかったものの、気象庁は火山性微動の振幅が大きくなった13日に、警戒レベルを「活火山であることに留意」(レベル1)から「火口周辺規制」(レベル2)に引き上げていた。

阿蘇山の噴火を契機に、火山観測と研究、情報発信の大切さを再認識し、火山とともに生きるための防災力を高めたい。

日本は111の活火山が連なる火山の国である。阿蘇山は鹿児島県の桜島などと並ぶ活動度の高い火山であり、雄大なカルデラを訪れる観光客も多い。

20日の阿蘇山噴火は、地下のマグマで熱せられた地下水が噴き出した水蒸気噴火である可能性が高いとされ、前兆現象を伴わずに突然発生するケースが多い。平成26年9月の御嶽山噴火は警戒レベル1の段階で発生し、多くの登山者が犠牲になった。

今回は中岳第1火口噴火の1週間前に警戒レベルを引き上げたことが犠牲者、けが人が出なかった大きな要因となった。

同様の変化が必ず捉えられるとはかぎらないが、平時からの観測と研究は防災上、どの火山においても極めて重要である。

御嶽山噴火を教訓に、活動火山対策特別措置法が改正され、自治体や観光業者に避難計画の策定が義務付けられた。しかし近年は観測態勢や研究人材が縮小・衰退の傾向にあり、改善に向かっているとはいえない。

国と自治体は、大学や研究機関と連携し、観測態勢の拡充を図るとともに、住民や観光業者を巻き込んで地域ぐるみで防災力を高めていくことが大事だ。こうした取り組みが、火山を知り、火山と共存する力になる。

火山は何十年、何百年という長い時間軸で活動する。

観測と研究を担う人材育成にも長期的な視野が求められる。中学や高校の理科教育における地学の位置づけについても、見直す必要があるのではないか。