「政治とカネ」に揺れる広島3区 保守票はどこに

河井克行元法相の地盤だった衆院広島3区で、候補者の演説を聞く有権者ら=19日、広島市安佐南区(鈴木俊輔撮影、画像を一部加工しています)
河井克行元法相の地盤だった衆院広島3区で、候補者の演説を聞く有権者ら=19日、広島市安佐南区(鈴木俊輔撮影、画像を一部加工しています)

公職選挙法違反罪で実刑が確定した河井克行元法相(58)が当選を重ねてきた広島3区(広島市安佐(あさ)南区など)。〝与党統一候補〟として立候補した公明前職や立民新人らが争う屈指の注目区は、「政治とカネ」の問題で揺れる保守票の行方が浮沈の鍵を握る。与党への逆風から、地元選出の総理誕生。空気感が一変する中、「保守の受け皿になる」と公言する維新新人も参戦した。混戦を制すのは―。

公示日の19日、公明前職の斉藤鉄夫氏(69)は訴えた。「地元の疑問に答えることから、信頼回復を始めていきたい」。平成5年、岸田文雄首相と同じ衆院旧広島1区でともに初当選を果たした現役閣僚。自身が「与党統一候補」であると繰り返し、自民との距離の近さを強調した。

斉藤氏の擁立決定までには紆余曲折(うよきょくせつ)があった。

発端は2年前の参院選。選挙戦では、河井元法相の妻の案里氏(48)=同罪で有罪確定=を支援した自民党本部と、ベテランの溝手顕正(けんせい)元国家公安委員長(79)を支持した党県連が対立。自民は2議席独占を狙ったが、立民などの推薦を受けた候補にトップ当選の座を奪われた上、溝手氏が議席を失った。

案里氏もその後、大規模買収事件に絡み、当選無効に。逆風の中で迎えた今年4月の参院広島選挙区再選挙では、新人を擁立したものの、野党各党の支援を受けた宮口治子氏(45)に議席を奪われた。

衆院広島3区の候補者選びでも綱引きがあった。

元県議の石橋林太郎氏(43)の擁立を目指した自民県連に対し、党本部は候補擁立の見送りを決定。比例で当選を重ねていた公明の斉藤氏に一本化する方針を決め、石橋氏を比例中国ブロックの1位とした。

ようやく落ち着いた格好だが、候補者調整や買収事件が落とした影は濃い。

選挙区を公明に奪われたわだかまりについて、自民県連幹部は「本来なら絶対に容認できなかったが、(与党で)3区を守ることを優先しなければならなかった」と打ち明けた。

買収事件についても、30年以上自民を支持する広島市安佐南区の無職女性(83)は「(河井元法相から)一言でいいから説明や謝罪の言葉が聞きたかった」と不信感を口にする。

与党から離れる票の取り込みをねらい、野党は舌鋒(ぜっぽう)鋭く攻め込む。「必ず金権政治を終わらせる。新しい風を吹かせていく」。支持者を前にこう力を込めたのは、立民新人のライアン真由美氏(58)。4月の参院再選挙の再現を目指すライアン氏は「政治はクリーンであるのが普通。皆さんは納得されてないはずだ」と訴える。

一方、広島選出の岸田首相の誕生で、風向きが変わったとの見方もある。ライアン氏の陣営幹部は「与党への期待感が高まっているのは感じる。ただ、今回の選挙は岸田政権への審判ではない」と牽制(けんせい)。「有権者の政治とカネに対する思いの受け皿になれば勝機はある」と強気だ。

保守層の切り崩しを図るのはライアン氏だけではない。公示直前に立候補を表明したのが、ラジオ司会者で維新新人の瀬木寛親(せぎ・ひろちか)氏(57)だ。首長や地方議員を数多く抱える関西と異なり、党の知名度は劣る。それでも瀬木氏は「金権政治との決別」を掲げ、「公明に投票したくない自民支持層もいる。支持はいただける」と意気込む。

広島3区ではN党新人の矢島秀平氏(29)、いずれも無所属新人の大山宏氏(73)、玉田憲勲(のりたか)氏(64)も立候補している。(鈴木俊輔)