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免許返納だけでは…命守る政策を 池袋暴走事故遺族 松永拓也さん(35)

判決後に会見する松永拓也さん=9月2日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(桐山弘太撮影)
判決後に会見する松永拓也さん=9月2日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(桐山弘太撮影)

交通事故の発生件数や死者数は昔に比べて減ったものの、今も年間3千人近くが命を落としている。政治家を目指す方々には、車の技術の向上だけに焦点を絞らず、事故の起きにくい道路の整備、運転免許の更新制度のあり方や車の販売方法など人命保護の視点をしっかり持ってもらいたい。

あの日以降、高齢ドライバーの運転免許の自主返納が増えたと聞くが、車の利便性を手放すには大変な決断がいる。家族の説得などもあっただろうが、そうした個々の決断に頼るのではなく、道路整備やコンパクトカーの普及、公共交通機関の選択肢を増やすなど、返納しやすい社会環境の整備が必要だ。

一定の交通違反歴のある75歳以上の免許更新時に、実車試験の実施が義務付けられることになったが、試験に落ちた人をどうフォローするのかも合わせて考える必要がある。免許を返納するだけでは、根本的な問題解決にはならない。

事故は突然起きる。車にはねられた遺体の損傷は激しく、遺族は愛する人の傷ついた姿を直視しなければならず、とても苦しい。一瞬の出来事によって被害者だけでなく、加害者の一生も大きく変わる。

元被告に対する実刑判決の言い渡しから、1カ月以上が過ぎた。裁判が終わっても家族の命は戻らない。交通事故というのは遠い世界の話だと思っていたが、それは幻想だった。

いま私の心には、むなしい気持ちが残っている。それでも、どうやって同じような事故を防ぐかということを考えなければならないと思っている。

そしていつの日か、旅立った妻と娘に「2人の命を無駄にしなかったよ」と胸を張れるよう、取り組んでいる。社会に潜む課題や理不尽。それらにメスを入れることができるのは、政治の力にほかならない。命を守る政策に期待したい。

池袋暴走事故 東京・池袋で平成31年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、妻の真菜さん=当時(31)=と長女、莉子ちゃん=同(3)=が犠牲になった。運転していた旧通産省工業技術院元院長、飯塚幸三元被告(90)については禁錮5年の実刑判決が確定、収容された。

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