飛行機の“待ち時間”もCO2排出量も削減、全米の空港に導入される新システムの劇的な効果

徹底的に無駄を省くシステム

現在ほとんどの空港では、ゲートからプッシュバックしてくる順番に従って何台もの飛行機が離陸待ちの列をつくっている。それによって駐機場に渋滞が発生し、離陸を待つ間にアイドリングを続ける飛行機が滑走路に大きな負担をかけているわけだ。

さらに、飛行機が滑走路をタキシング(地上走行)して上空に飛び立つまでの所要時間を、管制官がいつも正確に予測できるとは限らない。FAAは各航空会社のフライトスケジュールを把握しているが、飛行機が滑走路の特定の地点に姿を見せるまで、管制官たちにも正確な出発時刻はわからないのだ。

こうした予測不能な状況に対処するため、空港ではスケジュールの随所に余裕をもたせ、システム全体が滞りなく機能するようにしている。結果として、「システムに多くの無駄が生じることになるのです」とMITのバラクリシュナンは指摘する。

乗客から見た無駄とは、30分も前に到着しているはずの飛行機への搭乗を待たされたり、離陸待ちの列に並ぶ飛行機のなかで狭苦しいシートでじっとしていなければならなかったりすることだ。一方、航空会社にとって無駄なことといえば、燃料を余計に消費すること、そして余分なCO2を大気中に放出することだろう。

新たに開発されたソフトウェアは、米国の航空管制システムの近代化を目指す20年にわたる努力から生まれた。飛行機が実際にゲートを離れた時刻や駐機場に移動した時刻など、各航空会社からリアルタイムで届く11種のデータを取り込み、離着陸する飛行機の動きをより的確に統率するためのソフトウェアである。

提供される情報は、さほど複雑であったり最新のものであったりする必要はない。オペレーション担当者や管制官、航空会社のスタッフなど、空港で働く人々がそうした情報をリアルタイムに、少ない電話のやりとりで無理なく共有できるようにすることが重要なのだ。

最終的には、管制官が手作業でフライトを管理するために使っている紙の運航票が廃止される。そして一部の滑走路が閉鎖される場合に自動的に管制官たちに通知が行き渡るような、完全にデジタル化されたシステムが実現するはずだ。

全米の空港に順次導入へ

このシステムが完成すれば、燃料の大幅な節約が可能になる。FAAはアメリカン航空と共同で4年の歳月を費やし、ノースカロライナ州のシャーロット・ダグラス国際空港で新ソフトウェアの試験運用を実施した。その結果、タキシングの時間が短縮されたことで年間27万5,000ガロンを超える燃料を節約できたという。

この節約できた燃料の量は、ニューヨークとシカゴを結ぶ路線をボーイング737で185回航行できる量に相当する。CO2の排出量も年間2,900トンを削減できたといい、これは貨車15両分の石炭を燃やした場合の排出量とほぼ同じである。

乗客にとっての利点は、出発時間の遅延が1日当たり40分ほど短縮されたことだ。商用便や貨物便、軍用機や自家用機によるフライトを含め、発着便数の多さが世界屈指のシャーロット空港にとって、この結果は「離発着する航空機をさらに増やせる」ことを意味すると、同空港の航行担当ディレクターを務めるヘイリー・ジェントリーは言う。「既存の滑走路を最大限に活用できるということなのです」

FAAは、ボルティモア、ボストン、シカゴ、ダラス、ニューヨーク、フェニックス、サンフランシスコなど、米国で特に発着便数の多い27の空港に、22年から順次このソフトウェアを導入したいと考えている。27空港すべてに導入を終えるには、10年ほどかかるかもしれない。

個々の乗客にとって、こうした変化はゆっくりとしか感じられないかもしれないと、FAAでアシスタントアドミニストレーターとして近代化プログラムを担当するパム・ホイットリーは言う。それでも乗客のいらだちは減っていくはずだと彼女は期待する。「搭乗口に行っても飛行機が到着しておらず、いつになったら乗れるかわからないという経験は、できることなら乗客の皆さんにはしてほしくありませんから」と彼女は言う。



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