飛行機の“待ち時間”もCO2排出量も削減、全米の空港に導入される新システムの劇的な効果

空港で飛行機が“渋滞”すれば遅延が発生し、無駄な燃料が消費されて二酸化炭素(CO2)の排出量が増える。しかも乗客は待たされる──。こんな悪循環を解消すべく、航空機の円滑な離着陸を可能にするシステムが開発された。全米27カ所の空港に導入が予定されているこの新システムは、遅延や無用なCO2排出を極力なくす効果が期待されている。

TEXT BY AARIAN MARSHALLTRANSLATION BY MITSUKO SAEKI

WIRED(US)

飛行機の席についてシートベルトを締め、いよいよ目的地に向けて出発する──。そんなときは気分がいいものだ。

しかし、滑走路に向かうまでに飛行機の“渋滞”に巻き込まれ、機内で離陸の順番を待つ羽目になるのはいただけない。こうした待ち時間は地球のためにもよくないことがわかっている。

人は飛行機に乗るだけで、ほかの行動ではありえないほど大量の二酸化炭素(CO2)をまき散らしている。世界全体で見ると、2019年に航空機が吐き出したCO2の量は10億トンを超えていた。これは人間に由来するCO2排出量全体の2%を超え、船舶や鉄道からの排出量を上回る規模である。

飛行機のエンジンからは、ほかにも窒素酸化物や細かいすす、水蒸気が放出されている。これらもまた、地球温暖化の原因となっている。

離陸と着陸の時間は、通常はフライト全体のほんの一部にすぎない。ところが米航空宇宙局(NASA)によると、離着陸時のCO2排出量は全体の4分の1にもなるという。離発着の際に機体を無駄に停止させると、燃料の消費が増えてしまう。飛行機が滞りなく空港に出入りできれば、乗客はもちろんすべての人にとって恩恵があるだろう。

この問題について、すべては飛行機が空中で動くようにできていることが原因なのだと、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空・宇宙航行学教授で、空港運営について研究しているハムサ・バラクリシュナンは言う。

ゲートで待機中の飛行機は、補助動力システムを使って基本的な機器類のみを作動させている。続いて滑走路に移動するためのプッシュバックが始まると、エンジンが稼働して燃料が燃え始める。このときの空港内でのアイドリングが、周辺地域の大気汚染にもつながるのだとバラクリシュナンは指摘する。周辺の人々が生活し働いている場所は、大空の真ん中ではなく空港のすぐ近くなのだ。それに騒音の問題も深刻になる。

そこで米連邦航空局(FAA)とNASAは、航空機の円滑な離着陸を可能にするシステムを開発し、遅延や無用なCO2排出を極力なくすことに成功した。開発には現役のロケット科学者たちも参加しており、天空に飛び立つ宇宙船が安定した軌道を確保できるようNASAが取り組んでいた研究から派生するかたちで、このシステムは生まれた。