「製造業界のアップルになってくれないか」
令和元年に東京で開かれた機械設備の展示会で、金属加工などを手掛ける大阪府内の中小企業の男性経営者は、世界大手の受託製造企業幹部から口説かれた。出展したセンサーを作らせてほしいとの打診だった。
センサーは、製造ラインで金属加工を行う工作機械の温度や振動などを測定し、作業に最適な加工器具の選定や故障の予測などを可能にした。受託製造企業の幹部はその性能を絶賛。米アップルがスマートフォンの製造を外部企業に委託することを引き合いに出しての説得だった。魅力に感じたが、最後は断った。製造工場を中国に置くと聞き、一気に気持ちが冷めたからだ。