<独自>1歳次女に薬物、母逮捕へ 暴行容疑、投与後?に死亡 大阪府警

次女の死亡をめぐる主な経緯
次女の死亡をめぐる主な経緯

大阪府和泉市の病院で昨年5月、入院中だった次女=当時(1)=に対し、治療に不要な薬物を投与したとして、大阪府警捜査1課と高石署は24日午前、母親(33)=大阪府高石市=を任意同行し、暴行の疑いで取り調べを始めた。捜査関係者への取材で分かった。容疑が固まり次第、逮捕する方針。

次女は投与が疑われる時期の数日後に死亡。母親は医師の所見などから、子供を病気にして自分に注目を集めようとする「代理ミュンヒハウゼン症候群(MSBP)」の可能性があるといい、府警で今後、死亡の経緯などを詳しく調べる。

捜査関係者によると、母親は昨年5月上旬、和泉市内の病院で、入院中の次女に何らかの方法で、薬物を摂取させた疑いが持たれている。府警が次女の遺体を司法解剖した結果、母親に処方されていた抗不安薬の成分が検出された。この成分を乳幼児が大量に摂取すると、生命の危険性もあるという。

次女は以前から無呼吸発作などの症状で入院を繰り返していたが、症状が安定して外泊が許された際や、病院で母親が近くにいる際に容体が急変するケースが頻発していた。

昨年2月には母親が自宅から「呼吸をしていない」と119番し、病院に搬送された。血中の酸素濃度が低下して意識がなく、以降は入院していた。

119番の約30分前には、次女の酸素濃度の異変をアラームで知らせる機器の電源が切られた形跡もあった。こうした状況から、府警は母親が次女に何らかの危害を加えた可能性があるとみて捜査していた。

母親は逮捕前、産経新聞の取材に「(次女には)私は何もしていないし、話す義務はない」と話した。

「医療乱用虐待」児相保護も裏付け至らず

次女に薬物を投与した疑いが持たれる母親には、MSBPの可能性が指摘されている。児童虐待の一種で「医療乱用虐待」とも称される珍しい症状だ。次女は児童相談所に一時保護されながら虐待が裏付けられず、親元に戻された末に亡くなった。

捜査関係者によると、次女は生後間もない令和元年5月、無呼吸発作などの症状から大阪府南部の病院に入院。以降、母親の付き添い時や防犯カメラのない一般病棟で、原因不明の発作が起きるケースが続発したという。

不自然な容体の悪化が続いたことなどから、病院側は同年8月に虐待の可能性もあるとみて、管轄の児童相談所「岸和田子ども家庭センター」(同府岸和田市)に通報。同月下旬、センターは次女を一時保護したが、体に暴行の痕はなく、虐待を示す明確な状況も確認できなかったため、9月中旬に一時保護を解除した。しかし、約5カ月後の昨年2月上旬、次女は自宅で意識を失って病院に搬送、同5月に死亡した。

母親は次女を献身的に看病していたとされるが、容体が急変するのは二人きりのケースが大半だったとみられる。大阪府警はこれまでの捜査で、こうした状況を複数の医師に照会、母親がMSBPの可能性があるとの所見を得たという。

MSBPが起因とみられる事件は過去にも起きている。平成16~20年に岐阜や京都の病院で娘3人の点滴に水道水などを入れて死傷させたとされる母親は、起訴前の精神鑑定でMSBPと認定。山梨で29年に次男にインスリンを注射して低血糖症にさせた母親も、判決でMSBPを動機とする医師の見解が採用された。

虐待に詳しい日本体育大の南部さおり教授は「熱心に看病する姿に、周囲から『頑張っている』『大変な母親』という同情や称賛が集まる。それが心地良いと感じ、虐待行為につながっていくのだろう」と指摘。国内の報告例は少なく、「小児科医でもMSBPの正しい知識を持っていない人がいる。MSBPが虐待の一種だという認識を持つことが防止につながる」と話した。

代理ミュンヒハウゼン症候群

「ほら吹き男爵」の逸話が残るドイツの男爵の名前にちなんだ病名。周囲の関心を引くために自らの病気を装う「ミュンヒハウゼン症候群」の別形態で、子供など身近な存在に危害を加えて病気の状態にさせ、入院させるなどの行為を特徴としている。近年は児童虐待の一種として注目されており、「医療乱用虐待」とも呼ばれる。