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『東京の生活史』 驚きに満ちた150の人生

『東京の生活史』
『東京の生活史』

街にいるひとを見て、自分にはちがう人生もありえたんだな、という感慨が湧いてくることがあります。あるいは、もう自分の人生は引き返せないんだな、とも。

自分以外にもたくさんの人生があって、そのどれもが驚きに満ちている。そういうことに気づかせてくれる一冊です。

公募により集められた聞き手150人が、それぞれ語り手を見つけてくる。そして、その方の人生について話を聞き、1万字にまとめる。これだけのシンプルな方法によって、できあがっています。

東京という街には、ほんとうにたくさんのひとが暮らしています。生まれた場所も、性別も年齢も職業も、いま人生のどういう段階にいるかも、バラバラな150人。

「で、前の工場っていうのは、そうだ、火事になって焼けた」「そう、だから、次は東京に。東京、うん。東京だったらわたし一人ぐらい生きてく場所があるんじゃないかなと思って」「私の人生には、たくさんの麒麟がいる」「だから私と地球の戦いはまだ続くねん」

ここにあげたのは、それぞれのインタビューのタイトルで、せりふの一部を抜き出してつけています。これを見るだけでも、不思議と、そこに生身のひとがいるんだなあという感じがしてきます。

1216ページ、重さ約1・5キロとたじろぐ大きさの本ではありますが、それだけたくさんの人生が織り込まれています。ゆっくりゆっくりお読みいただけたらうれしいです。

(筑摩書房第二編集室 柴山浩紀)