工事止まったマンション住民悲鳴 中国恒大現地ルポ

中国南部の広東省仏山市にある中国恒大集団のマンション建設現場。工事は止まったままで、周辺の関連施設も未完成のままだった=15日(三塚聖平撮影)
中国南部の広東省仏山市にある中国恒大集団のマンション建設現場。工事は止まったままで、周辺の関連施設も未完成のままだった=15日(三塚聖平撮影)

経営危機に陥った中国不動産大手「中国恒大集団」をめぐり、猶予期限が目前に迫っていた米ドル建て債の利払い実施が伝えられたことで、国内外の市場関係者には22日、安堵(あんど)が広がった。債務不履行(デフォルト)の危機をひとまず回避した格好だ。ただ、頼みの綱とする資産売却が難航して抜本的な資金繰り改善のメドは立たず、同社が手掛ける開発物件は工事停止が続くなど、懸念は簡単には払拭できそうにない。現地で実情を探った。

中国南部、広東省の省都・広州市に隣接する仏山(ぶつざん)市。恒大集団のマンション建設現場では、わずかな作業員の姿が見えるだけだった。フェンスの取り外し作業をしていた男性作業員は「2カ月以上前から工事は止まっている。今は建築資材を別の現場に移す作業が中心だ」と明かした。

建設済みの一部建物には既に人が住んでいるが、高層階の複数のベランダには「地下鉄もスーパーもない」「高額料金の低サービスを拒否する!」といった悲鳴のような言葉が書かれた赤い横断幕があった。住民の自営業男性は「学校や交通機関、映画館がそろうという話だったのに今もできていない。すごいエリアになると期待していたのに、急に工事が止まるとは思いもしなかった」と嘆いた。

恒大集団の負債総額は6月末時点で1兆9665億元(約35兆円)に達し、それが重荷となって資金繰り難に苦しむ。作業員の賃金や取引先への代金の未払いが伝えられ、中国全土で展開するマンション建設も、資金不足により工事停止が続くケースが目立つ。

中国当局が警戒するのは、住宅購入者などによる抗議活動が広がって社会が混乱することだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは9月下旬、中国当局が地方政府に対して抗議活動を監視する法執行部隊を設立するよう指示したと報じている。広東省深圳(しんせん)市にある恒大集団の本部が入るビル付近でも、抗議活動を押さえ込むため多数の警官らが配置されている。

恒大集団は今回、今月23日に期限を迎える米ドル建て債の約8350万ドル(約95億円)の利払いはどうにか資金を手当てできたもようだ。しかし、既に猶予期間に入っているドル建て債は他にもあり、年末までに相次ぎ利払いの期日が到来する。ロイター通信によると、格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、年内に仕入れ代金などを含めて約1千億元規模の支払期限を迎えるとの推計を8月に示している。

事業売却で資金を確保する計画だが思うような成果は出ておらず、9月末に傘下の地方銀行、盛京銀行の株式を約100億元で売却することを決めた程度だ。恒大集団は今月20日に発表した声明で「グループの資産売却に大きな進展はない」と説明し、「財務上の義務を継続して履行できる保証はない」と厳しい台所事情を明かした。

一方、中国政府は恒大問題を「制御可能」と強調し、庶民の反発が強い不動産バブルの解消を優先させる姿勢を崩していない。習近平国家主席の経済ブレーンとして知られる劉鶴(りゅう・かく)副首相は20日に「現在、不動産市場で個別の問題が起きているが、リスクは全体的に制御可能だ。不動産市場の健全な発展という全体的な基調が変わることはない」との考えを強調した。(広東省仏山市 三塚聖平)

>中国恒大集団、米ドル債の利払い実施へ