「ルパン三世」テーマ曲の秘密 大野雄二が〝初公開〟

「実写ドラマは、やっぱりちょっと日本ふうな音楽にしないといけなくて、自分としては、どこか〝手加減〟している感じだった」

だが、「ルパン三世」については「無国籍な音楽で構わない」といわれた。

「当時、フュージョン、ボサノバ、ソウル音楽…と、さまざま音楽から影響を受け、まさに無国籍な音楽を作曲したい絶頂期だった。これは、好きに音楽が作れると思った」

マカロニウエスタンの秘密

「俺はね、結構計算して作るんだ」と大野は、テーマ曲「ルパン三世のテーマ」誕生の秘密を語り始めた。

曲は、イントロを除く最初の旋律から順に作る。

「出だしでインパクトを与え、ここで聴き手に曲を覚えさせなきゃいけない」

CMソングを手掛けて体得した極意だ。ちなみに「ルパン・ザ・サード」という歌詞を繰り返すのも、商品名を連呼するCMソングの手法。

ともかく大事なのは最初の4小節ないしは8小節の旋律。ここをどうするか。

「流行を取り入れたらダメだ。テーマ曲は、劇中でさまざまにアレンジして使われる。これに耐えられる骨太の旋律であることが大切」

そこで大野が着目したのが、ちょっと前まで大人気だったマカロニウエスタン映画の音楽だ。

マカロニウエスタンはイタリア製の西部劇のことだが、エンニオ・モリコーネらイタリアの作曲家が提供した音楽が新鮮だった。

大野によれば、その頃、日本の劇中音楽作曲家の間でマカロニウエスタンからの援用が、ひそかにはやっていたという。

大野も「ルパン三世のテーマ」の最初の8小節は、「マカロニウエスタンの音楽の典型的な和音進行を使って作った」と明かす。

「いや、この話は、初めてしますよ。ずっとモヤっとさせておきたかったんですけどね」と笑う。

1日15時間

今回の6シリーズ目の音楽は、2月頃から作曲に着手し6月末に録音を終えた。そのうちの27曲を収めたサウンドトラック盤「LUPIN THE THIRD PART6~LONDON」が11月3日に発売される。

多いときは、1シリーズで200曲も書いたという。楽器は使わない。朝起きたらすぐに鉛筆を握り、五線紙に向かう。新シリーズのたび、1日15時間を作曲や編曲に費やす生活を3カ月間続ける。ことし5月に80歳になったが、音楽に集中する生活は変わらないという。

「中毒みたいにならないと作れない。散歩とか家から出るのはあまり好きじゃないから、ストレスに感じない」と笑う。

CMの仕事を始めた頃も自宅から出なかった。レコードで、あらゆる分野の音楽を聴きまくっていたからだ。そこで「つまらないドミソもあれば、素晴らしいドミソもある」と気づぎ、その後手掛けていったのが、「犬神家の一族」「人間の証明」など映画の音楽であり、「ルパン三世」だった。

「当時の自分の音楽を聴き直すと無駄が多い。だけど、52年のルパンの音楽の編曲だけは、われながら感心する。勢いだけで譜面を書いたが、その勢いが魅力になっている。いまの僕にはできない。あの頃の自分が、うらやましい」としみじみ語る。

「ルパンをこんなに長く続けるとは想像もしなかった。こうなるとライフワークだね。あるいは、お礼奉公か。だって、ほぼ、これで生きてきたんだもの」(石井健)