東北の注目選挙区ルポ

㊦福島5区 処理水争点に一騎打ち

東京電力福島第1原発に並ぶ処理水などを保管するタンク=福島県(芹沢伸生撮影)
東京電力福島第1原発に並ぶ処理水などを保管するタンク=福島県(芹沢伸生撮影)

大きな争点

福島県浜通りのいわき市と双葉郡(6町2村)を区域とする衆院福島5区。選挙区の大熊、双葉両町には、東日本大震災で未曾有の事故を起こした東京電力福島第1原発がある。政府は今年4月、福島第1原発で蓄積された放射性物質のトリチウムを含む処理水について、海洋放出する方針を決定した。水産業などから風評被害を懸念する声が上がっており、5区の大きな争点になっている。

「今回の選挙で岸田内閣を退陣させ、汚染水の陸上保管を続ける。汚染水で海を汚さない、野党による新しい政権を作らせてほしい」。公示日翌日の20日、野党統一候補の共産党新人、熊谷智氏はいわき市のショッピングセンター前で行った街頭演説で、処理水の問題に切り込んだ。

熊谷氏は「4月の政府方針決定後、いわきではいち早く労働組合団体の橋渡しで立憲民主、社民、共産3党で『海洋放出は駄目』との共同声明を出し、市長に対し政府に白紙撤回を要請するよう求める要望書を提出した」と話す。この3党は県の組織間でも「処理水は国民の合意がない限り、海洋放出しない」ことを盛り込んだ共通政策で17日に合意するなど「海洋放出反対」を鮮明にしている。

一方、自民党前職の吉野正芳氏は20日、福島第1原発に隣接する楢葉町の商業施設で街頭演説を行った。応援演説をした選対本部長で自民県議の吉田栄光氏は、処理水の問題に触れ「双葉郡の復興には、政府が決めた方向性を前に押し出していくのがわれわれの責任」としたが、復興相の経験もある吉野氏自身は、町長らとの良好な関係を強調した上で「課題を抱える楢葉町のために働くことを約束する」と話すにとどめた。

吉野氏は「海洋放出を分かってもらうのは難しい部分がある」としながらも「丁寧に説明すれば、賛成でなくても『仕方がないね』にはなると思う」と、処理水の海洋放出について有権者の説得に自信を見せる。ただ、選挙戦では「課題はいろいろあるが、双葉郡に国際教育研究拠点を整備することを訴える」としている。

ポスターにも違い

処理水に対する選挙戦での両者のスタンスは、ポスターにも如実に表れている。熊谷氏は「海洋放出中止」としているが、吉野氏は「第2期復興・創生へ」と記し、処理水の文字は見当たらない。

だが、選挙区内で処理水問題を重視する有権者は少なくない。漁業関係で働くいわき市の50代男性は「最優先課題は、新型コロナウイルス対策と処理水。投票は市民を第一に考えてくれるかどうかで判断したい」と話す。

選挙戦で、処理水問題を前面に押し出す熊谷氏と、地元の復興推進を強調する吉野氏。有権者の判断が注目される。(芹沢伸生)

会員限定記事会員サービス詳細