ビブリオエッセー

コペル君が教えてくれた 「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

「その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです…どんなときにも、自分に絶望したりしてはいけないんですよ」

主人公である中学2年のコぺル君がお母さんに言われた言葉の一節だ。コペル君の心の成長を描いたこの小説で、私はこんなエピソードが心に残った。

ある日、コぺル君の親友の北見君と水谷君が言いがかりをつけてきた上級生らに囲まれた。特に普段から生意気だと目をつけられていたのが北見君で、水谷君がこれをかばい、そこへ勇気を振り絞って駆け寄ったのが、やはりコペル君の友達の浦川君だった。

「北見の仲間は、みんな出て来いッ」。三人に制裁を加え、恐ろしい声でにらみをきかす上級生に、コぺル君は標的になるのを恐れて動けなかった。勇気を出せなかったコぺル君は自分を責めて、次の日から学校を休む。

そんなコぺル君にお母さんは女学校時代の話をした。湯島天神下の石段で重そうな荷物を抱え途方に暮れるおばあさんを見かけ、手伝おうとして声をかけられなかった記憶だ。どうして駆け寄れなかったのか、自分が情けなく、時が経った今も忘れないという。でも、その後悔があったからこそ後の行動に生かせたのだと。

私も同じような経験がある。授業中、目の前で友達が倒れた。「誰か保健室の先生を呼んできて!」と言われたのに足が動かなかった。大変だと思いながら一歩踏み出せなかった。

この本を読み、実はそんな経験と反省こそが将来、誰かの命を救うことにつながるかもしれないと知った。後悔で終わるのではなく、どう次に生かすか。コペル君が教えてくれた。

大阪市城東区 立川明里沙(18)

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