衆院選政策を問う

②安保 敵基地攻撃能力で溝

衆院選が公示された19日午前、北朝鮮は東部の新浦(シンポ)付近から日本海へ向けて弾道ミサイルを発射した。翌20日に朝鮮中央通信がミサイルは新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だったと報じ、技術が進展していることを強調した。在任時の安倍晋三首相が「迎撃能力だけで国民の命と平和な暮らしを守り抜けるのか」と提起したのは昨年9月。以後、目立った進展はないが、衆院選に臨む主要政党はいかなる安全保障政策を掲げているのか。

岸田文雄首相(自民党総裁)は遊説を切り上げて出席した19日の国家安全保障会議後、記者団に「北の核・ミサイル関連技術の著しい発展は日本と地域の安全保障にとって見過ごすことはできない。いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう改めて確認した」と強調した。

首相は8日に初めて行った所信表明演説で、国家安全保障の基本方針「国家安全保障戦略」を改定する方針を示しており、同戦略に敵基地攻撃能力の保有を盛り込む検討が進んでいる。

自民党も公約で「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含め、抑止力を向上させる新たな取り組みを進める」とうたい、敵基地攻撃能力の保有に積極的な姿勢を示している。日本維新の会も「領域内阻止能力の構築について積極的な検討を進める」としており、同能力の保有に前向きだ。

一方、連立与党の一角の公明党は、同盟国の米国と「抑止力・対処力を一層向上」させると訴えながらも、公約では敵基地攻撃能力保有の是非に言及していない。山口那津男代表が19日のNHK番組で「敵基地攻撃能力というのは昭和31年に提起された古めかしい議論の立て方だ」と述べたように、党として一貫して否定的な立場をとる。

齟齬(そご)が生じているのはこれだけではない。自民は公約で「対GDP(国内総生産)比2%以上も念頭に、防衛関係費の増額を目指す」と主張。これに対し山口氏は15日の報道各社のインタビューで「防衛費だけを急に2倍に突出させる資源配分は国民の理解を得られない」と牽制(けんせい)した。

こうした自公間の溝は、衆院選の結果と相まって今後の国家安全保障戦略の改定作業に影響を及ぼすリスクもある。

立憲民主党は敵基地攻撃能力の保有だけでなく、射程が長いスタンドオフミサイルについても「慎重な検討を行う」と消極的で、共産党は「北東アジアの軍事エスカレーションが極限に達する」として「絶対阻止」を掲げている。

立民は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設中止も打ち出した。移設をめぐっては、平成21年8月の衆院選直前に当時の民主党代表、鳩山由紀夫氏が「最低でも県外」と発言。その後の鳩山政権は迷走した末に辺野古移設を容認した。

旧民主党のメンバーが幹部に多い立民は再び辺野古移設中止を訴えるが、日米関係については「健全な日米同盟を外交・安全保障の基軸」と位置付ける。多くの選挙区で共闘する共産は公約に日米安保条約「廃棄」を明記しており、政権奪取時に共産独自の政策は持ち込まないとはいえ、根本的な違いを棚上げにしたままの共闘となっている。(大橋拓史)

③外交 中国にどう対峙するか